富士通は11月4日から、企業の特許取得・管理業務を支援するためのソフト/サービス群、「ATMS(アトムス)シリーズ」の機能強化版の提供を開始する。

 ATMSは、大きく次の二つで構成する。一つは、富士通が整備している特許データベースをASP形式で使う「ATMS/IR.net」。もう一つは、ユーザー企業側にシステムをインストールして使うソフト群の「ATMS/PM2000」である。

 ATMS/IR.netは、特許データベースと分析用ツールからなる。今回新たに、米国特許をデータベースに加えた。特許庁が提供する国内特許に米国特許350万件を合わせて、日米1350万件の特許をデータベース化した。

 ユーザー企業は、これらのデータベースから特許情報を検索できる。今回発表した新版から、独自の分析機能を追加した。富士通総研が開発した言語分析技術を使って、特許間の関連性や、ライバル企業の特許取得動向を定量的・定性的に調べ、その結果をグラフなどで視覚的に確認することが可能という。

 一方のATMS/PM2000は、自社で所有する、あるいはこれから取得しようとする特許の管理機能を備える。今回追加した機能の目玉の一つが、特許の評価機能。特許を発明した部署や知的財産を管理する部署、経営層それぞれが、保有している特許の価値について“投票”し、その結果を集計。自社にとって価値が少ない特許の廃棄によるコスト削減に役立てることができる。特許は年間維持コストが1件当たり30万円。「大企業になると特許の維持だけで年間数千万円かかるケースもある。にもかかわらず、特許の廃棄はいままでおざなりになりがちで、余計なコストを払い続けているケースが多い」(GLOVIA事業本部の林 暁 本部長)。

 もう一つの目玉が、ライバル企業の特許取得状況を監視する機能である。ATMS/IR.netを使って、特定のテーマ(例えば燃料電池や液晶など)を事前に登録しておくと、特許公報を自動的に検索。当該のテーマに関連する特許情報をユーザー企業に配信する。ATMS/PM2000は搭載するワークフロー機能を使って、配信された特許情報を開発部門や知的財産を管理する部署に転送。「他社が取得しようとしている特許と自社技術が抵触しないかどうかを、漏れなく、かつ早い段階から検討し始めることができる」(林本部長)。

 林本部長は、「特許管理のシステムやサービスは、非常にニッチな分野。しかし、大学や研究期間で特許の取得が前年比で約150%にもなるなど、確実にニーズが高まってきている。ATMSは富士通自身でも使っているソフト。自社のノウハウを惜しみなく投入し、市場を切り開いていきたい」と語る。

 ATMS/IR.netの料金は、国内特許公報の検索サービスが初期費用280万円から。月額費用が15万円から。ATMS/PM2000は基本システムが300万円から。

(高下 義弘=日経コンピュータ)