「Webサービス技術は登場後3年で大きく進化した。これからの3年間では、Webサービスが一般的になることで企業情報システムの開発方法が大きく変わるだろう」。米マイクロソフトでWebサービス戦略を担当するクリストファー・カート グループ・プログラム・マネジャ(写真)はこう予言する。

 カート氏によれば、3年後、開発者とユーザーはアプリケーションを「サービス」としてとらえるようになる。ここで言うサービスとは、ユーザーの視点で見た、情報システムの個別機能のこと。例えば、在庫管理システムは「現在の在庫数の表示」、「在庫数の推移の表示」などのサービスをユーザーに提供している。情報システムは将来、こうしたサービスをどのような順番で組み合わせるかによって構築するようになる。独立したサービスの組み合わせにより、急なビジネスの変化にも対応できる。

 さらにカール氏は、「Webサービス技術は標準化が進み、開発者はインターネット上にある、他者が構築したサービスを利用できるようになる」と語る。「すでに米アマゾン・ドットコムや米イーベイは自社サイトの機能をWebサービスとして公開している。次の段階として、社内の業務システムを有料のWebサービスとして公開するITの先進企業が現れる。インターネット上のサービスと企業システムの境界はあいまいになる」(同)。

 カギとなるのは標準化だ。カート氏は複数の標準化団体に出席し、Webサービス関連仕様の標準化に注力している。「この3年で、セキュリティ、リライアブル・メッセージング、トランザクション処理の仕様策定は大きく進んだ」(同)。しかし、リライアブル・メッセージングとトランザクション処理の仕様は有力な候補が複数存在する。まだ標準が固まったとは言い難い。

 一方で『米マイクロソフトと米IBMの2社だけでWebサービスの標準を作ろうとしている。これでは、1社の仕様をデファクトとして押し付けた過去のやり方と変わらない』という批判が絶えない。これに対し、カート氏は「まったく同意できない。我々は2社だけでなく、専門分野を持つ多くのベンダーと共に仕様を策定している。例えばセキュリティ仕様のWS-Securityでは米ベリサイン、米RSAセキュリティなどが参加している。当社とIBMは積極的に貢献しているので目立ってしまっているだけだ」と反論した。

(矢口 竜太郎=日経コンピュータ)