KDDIは10月10日から、IP電話、テレビ放送を含む映像配信、インターネット接続を一括して光ファイバで提供する「KDDI光プラス」を始める。同社の片岡浩一ブロードバンド・コンシューマ事業本部ブロードバンド企画部長は、「光プラスのIP電話サービスを使うユーザーはNTTの加入電話を解約できる。ここまで機能が豊富なIP電話サービスは他にない」(写真)と自信満々だ。

 KDDI光プラスは、IP電話サービスの「光プラス電話」、映像配信サービスの「光プラスTV」、インターネット接続サービスの「光プラスネット」の三つのサービスからなる。当初は、政令指定都市を中心とした全国の主要都市にある16世帯以上のマンションがサービス提供の対象となる。映像配信サービスは12月から提供する。

 特にIP電話サービスと映像配信サービスは既存のサービスと一線を画している。IP電話サービスを契約したユーザーは、現在使っているNTT東西地域会社の加入電話を解約しても、発信者番号通知や“キャッチホン”機能、警察や消防への緊急通話など、よく使う機能はほぼ使える。そのうえ、それまでのNTT東西の電話番号をそのまま使い続けることができる。

 映像配信では、ケーブル・テレビやCS放送と同じ番組を配信する。従量課金制のオンデマンド型ビデオ配信も行う。片岡部長は、「従来のインターネット上の映像配信サービスと異なり、コンテンツが充実している。“光ファイバを使って何するの?”という疑問に対する一つの解を出した」と語る。

 インターネット接続の通信速度は最大1Gビット/秒で、この回線を同じマンション内のユーザーで共有する。ただし、マンション内では電話線を使ったVDSLで通信するので個々のユーザーが利用できるのは最大70Mビット/秒になる。

 VDSLではなくイーサネットを利用するサービスもあり、その場合は個々のユーザーの通信速度が最大100Mビット/秒になるうえに、IP電話サービスだけのユーザー以外は月額料金が400円安くなる。だが片岡部長は、「マンションでの利用を考えると、新しく配線しなければならないイーサネット方式よりも、既存の電話回線が利用できるVDSL方式が販売の主力になる」と見ている。

 ユーザーは、三つのサービスを自由に組み合わせて利用できる。利用料金は、IP電話サービスだけを使う場合で月額1980円。IP電話サービスとインターネット接続サービスを使う場合で月額4150円(イーサネット方式)か4550円(VDSL方式)。映像配信サービスを加えた場合、月額6550円(イーサネット方式)か6950円(VDSL方式)となる。この料金でテレビ番組を25チャンネルと、ビデオを3本まで視聴できる。片岡部長は、「NTT東西に払っている電話の基本料金が必要なくなるので、既存のADSLサービスに比べても2000円くらい割安になる」という。

 IP電話を使う場合の通話料は、光プラス電話のユーザーから一般の電話へかけた場合、全国一律で3分8円。光プラス電話を含め、KDDIのIP電話サービスを使っているユーザー同士の通話は無料だ。11月からは携帯電話やPHSへの通話も可能になり、料金は携帯電話への通話が23秒10円、PHSへの通話が1分15円である。

 16世帯未満のマンションや一戸建て住宅への本格的なサービス提供は2005年以降になる予定。企業向けのサービスについては、「企業で利用するのは構わないが、現状では1契約につき6台しかパソコンがつながらない。企業向けのIP電話サービスについてはやる方向で検討している」(片岡部長)という。

鈴木 孝知=日経コンピュータ