サイバードIMAGICA、IMAGICAの子会社でデジタル・コンテンツ制作を手掛けるIMAGICAディーシー21の3社は10月6日、テレビ放送中に視聴者の携帯電話機に対して関連情報を即時にメール配信する技術「ワンプッシュ」を開発したと発表した。まず地上波デジタル放送(今年12月から東京、大阪、名古屋で開始予定)での実用化を目指しており、来年1月にも電通やテレビ局と共同で実用化に向けた実験を始める計画だ。

 「ワンプッシュ」は、NTTドコモの「ムーバ505i」など赤外線の送受信機能を持つ携帯電話機とデータ放送を組み合わせたもの。テレビ画面の隅に小さなアイコンが表示されたときに、視聴者は携帯電話機をリモコンのように使い、テレビ受像機に赤外線を送信して関連情報をリクエストできる。すると、テレビ局や広告主からの電子メールが即座に携帯電話機に送られる。視聴者が面倒なURLを入力しなくて済むため、通販番組での“衝動買い”を誘発する効果も期待できるという。

 ワンプッシュを利用する視聴者は、このサービスを使えるテレビ受像機(専用アダプタを付加したテレビなど)を用意する必要がある。テレビはインターネットに接続しておく。そのうえで、携帯電話の電子メール・アドレスといった個人情報を、あらかじめテレビ局などが運営するデータベース・サーバーに登録しておく。すると、ユーザーIDが携帯電話機に割り当てられる。

 テレビ局は番組や広告の映像とともに、「ワンプッシュ」のアイコンをデータ放送で配信し、テレビ画面に重ね合わせて表示する。アイコンの配置はデータ放送用コンテンツの記述言語BML(Broadcast Markup Language)で指定する。

 アイコンを確認した視聴者は、携帯電話機のJavaアプリケーションを使い、赤外線でテレビ受像機に自分のユーザーIDを送信する。ユーザーIDを受け取ったテレビ受像機は、ユーザーID/チャンネル名/タイム・スタンプなどを、インターネット経由でテレビ局などのサーバーに送信する。サーバーは、携帯電話機の電子メール・アドレスに向けて、番組関連の情報を掲載したメールを配信する。

 テレビ番組の放送中に、出演者や広告に登場した店舗の電話番号といった情報を配信する方法は、従来からあった。例えばBSデジタル放送の番組連動型データ放送では、テレビ画面に番組映像を縮小表示して、残りの部分に関連情報を文字や静止画で表示している。しかし、映像自体の質にこだわりを持つ番組制作者や広告主のなかには、この方法を“画面を汚す”として嫌う声があった。「ワンプッシュ」を使うと、こうした問題を解消できる。

 このシステムを利用するサイバードなどは、今後テレビ局各社や広告主と協力して、個人情報を格納するデータベース・サーバーの共同運営体制を構築する考えである。視聴者が一度個人情報を登録するだけで、複数のチャンネルで「ワンプッシュ」が使えるようにして、利便性を高めることを狙う。

本間 純=日経コンピュータ