「SEのスキル・アップやソフト開発プロセス改革にはコミュニケーションが大切。あまり人に勧められることではないが、私は禁煙を20日でやめた。タバコ部屋で若手などと話をするためだ」と語るのは、富士通公共ソリューション本部で官公庁系システム構築事業を指揮する上嶋裕和本部長代理(写真右)である。

 公共ソリューション本部の前身の第三システムインテグレーション事業部で事業部長を務めていた上嶋氏は、CMM(能力成熟度モデル)を利用した開発プロセスの改革を推進、昨年3月のレベル3達成を指揮した。そのときに最も注意したことが「部門のなかのコミュニケーション」(上嶋氏)だった。

 品質向上とプロジェクトの失敗撲滅を目指すCMM活動に取り組んでいた上嶋氏がまず着目したのは、社内に埋もれていたイントラネット上のSPM(Strategic Project Monitoring)システムだった。

 SPMシステムは、全プロジェクトの進捗状況を把握してリスク管理をするツール。さらに、掲示板を備えており、若手SEが書き込んだプロジェクトの問題や質問に対して、熟練プロジェクト・マネジャたちが助言できる仕組みになっている。いわばナレッジ・マネジメント・ツールとも言えるものである。

 しかしSPMシステムは、あまり活用されていなかった。みんな、このシステムに入力したがらなかったのである。「問題点を書き込めば失敗をしていると思われ、人事評価が下がるかもしれない」と現場のSEは考えたからだ。

 そこで上嶋氏は書き込んだことを人事評価の対象にしないと宣言。さらに、熟練プロジェクト・マネジャには、有用な助言をするように促す、などといった対策をとった。自分自身もコメントを書き込むようにした。

 こうしてSPMシステム上のコミュニケーションが活発になったおかげで、ミーティングの議論も活発になった。「部長たちが月1回、SPMシステムへの書き込みについてレビューする場を設けたら、みっちりと議論し始めた。他の部門の事情を理解した部長がお互いに協力し合うことも出てきた」(プロセス改革を担当した事業推進部長の大高敏孝氏=写真左)。