Webサイトという形で具体化した情報の構造──これを「情報アーキテクチャ」と呼ぶ動きが広まりつつある。情報アーキテクチャの“伝道師”、ルイス・ローゼンフェルド氏が10月2日に来日。企業内イントラネットにおける、情報アーキテクチャ整備の指針とテクニックについて講演した。ローゼンフェルド氏は、「コンテンツそのものに手を入れずとも、少しの工夫で情報アーキテクチャは大きく改善する」と説く。同氏は、米フォードや米ヒューレット・パッカードなど大手企業Webサイトのコンサルティングを手掛けている。

 ローゼンフェルド氏が提示する情報アーキテクチャ改善のテクニックは主に三つ。まず一つ目は、「ベスト・リンク」を作成すること。あらかじめユーザーの検索動向を調べておき、特に関心が高いと思われるリンク先のページを抽出。これをリスト化しておく。そしてユーザーがそのリンクに近しい検索キーワードを入力した時に、そのベスト・リンクを上位に表示する方法だ。「ある特定のキーワードについて、2~3個のリンク用意しておく。全体のWebサイトの分量によるが、ベスト・リンクは全部で20~50程度あれば十分だろう。多すぎても分かりにくくなってしまうので良くない」(ローゼンフェルド氏)。その企業で注目度の高い情報の流通をいっそう加速することで、企業内の情報格差を少なくすることができる。

 二つ目は、注目度の高い2~7個程度のリンクをひとまとめにした「ガイド」というページを作ることだ。メインとなるページからワンクリックで参照できるようにする。一般的にポータル(玄関)と呼ばれるWebページがガイドの役割を担うはずだが、「一般的にポータルはさまざまな部署による情報がたくさん掲載されているため、一瞥するだけでは欲しい情報へのリンクが判別できない」(ローゼンフェルド氏)。

 最後の三つ目は、検索結果を情報源のカテゴリに分類して表示すること。例えば、検索結果をただ羅列するのではなく、「社内掲示板」、「自社製品の情報」、「セールスのノウハウ」、「外部のニュース」など、カテゴリごとに表示する。これによりユーザーは、どんな情報ソースから得られたものかを意識しながら、検索結果を参照できる。

 ナレッジ・マネジメントなど情報共有の分野でよく言われるのが、投資対効果がはっきりしないという点だ。情報アーキテクチャの整備についても同じ。投資対効果を数字として明確に打ち出すのは難しい。これについてローゼンフェルド氏は、「私が企業に情報アーキテクチャ整備の提案をするときには、さまざまな事例、すなわち情報アーキテクチャを整備したことによってどのように企業が変わったか、というストーリーを提示する。これが一番効果的だ」と話す。

 「投資対効果がはっきりしない、というのは情報アーキテクチャに限った話ではない。例えば政府は、投資対効果が数字としてはっきり出ないからといって、衛生や健康施策への投資を止めることはしない。大事だ、ということがはっきり分かっているからだ。情報アーキテクチャも同じ。情報アーキテクチャの大事さが分かっている企業は、細かい投資対効果の数値を提示しなくても納得してくれる。そしていま、そのような企業が急増してきた。私のような『インフォメーション・アーキテクト』という職業が成立するのだからね」(ローゼンフェルド氏)。

(高下 義弘=日経コンピュータ)