東芝の社内情報システム部門であるISセンターと東芝インフォメーションシステムズは、今年6月末のCMMI(能力成熟度モデル統合)レベル4達成のポイントをこのほど明らかにした。「現場のプロセス改革担当者も経営の視点に立って考えることがレベル4では大切」と東芝ISセンター情報化推進部品質管理担当参事の高野昌也氏は語る。

 CMMIはソフト開発プロセスを改革するためのモデルで、レベル4以上を達成している企業は日本では数社しかない。東芝社内の人事、経理、販売、生産システムなどの基幹システムを開発しているISセンターは、標準プロセスを持っていなかった1999年からプロセス改革に取り組み、2001年6月にレベル3を達成した。レベル3までは、抵抗する現場を説得しながら新しいプロセスの策定とその制度化・定着に注力した。その後2年間、ファンクション・ポイントやメトリクス分析、能力ベースラインの算定・導入などプロセスの定量化に取り組み、レベル4を達成した。

 「レベル4ではプロセスの定量的管理を行う。その際に、ソフト開発だけでなく経営面においても目標となるような指標を設定することが大切だ。これによって、トップも含め組織が継続して改善してゆく体制が整う」と高野氏は述べる。

 実際には、生産性や納品後の欠陥発生数、スケジュールの予算と実績の差異などコストに金額換算できる指標と、その結果を改善のためにフィードバックできる体制を作った。開発プロセスの現状把握、問題点の発見につながるだけでなく、経営の管理や顧客満足度の向上にも役立っているという。

 一方で、指標のデータを入力する現場の負荷低減にも注意を払っている。プロセス改革にあたって設定した11種類の管理プロセスのそれぞれについて、効果と効率(いわば費用対効果)をアンケート調査。この結果を踏まえて、「進捗管理や構成管理などのプロセスは、手間がそれほどかからずに大きな効果が得られる、プロジェクト完了後の分析などは手間がかかる割には効果が小さい、といったことがわかった。これを基に、管理プロセスも改良する」(東芝インフォメーションシステムズ開発センター共通技術担当参事の高橋弘利氏)という。

(安保 秀雄=日経コンピュータ)