金杉明信社長。「3Gでは
NECが世界をリードと自負
している」と熱弁

 NECは9月29日、中国の第3世代携帯電話(3G)に関する事業計画を発表した。現地法人の組織再編、研究開発人員の増強、現地企業との合弁などにより、3G事業の展開に向けた足場固めをする。同日北京市内のホテルで開かれた事業戦略発表会でNECの金杉明信社長(写真)は「中国の携帯電話ユーザーは現在2.5億人。これが1~2年のうちに4億~5億人に増えるだろう。NECが世界をリードしていると自負するモバイル・インターネットと3Gの事業を、中国にも展開していく」と意気込みを語った。

 まずNECは2003年中に、中国国内のNEC中国、天津NEC、西安NEC、桂林NECの各現地法人に分散している通信システム部門を再編し、3Gのインフラ整備を専門に担当する100人規模の部門を新設。さらに2004年初頭をめどに、これら現地法人を経営統合させる。

 これと並行して、W-CDMA関連の通信インフラ技術を持つ中国国内の通信機器メーカーとの業務提携を模索している。これも2004年初頭の提携調印を目指し、インフラ整備で主導権を握る考えだ。

 研究開発関連では、基礎技術研究を担当する中国研究院(2003年9月開設)、商品企画・ソフトウエア開発を担当するモバイルターミナル開発センター(2003年11月運用開始)をはじめ、中国国内の5研究所の規模を拡充する。中国国内の研究開発人員を、2004年3月に600人、2005年には1000人規模とする方針。また、中国市場に特化した個性的な携帯電話を開発するため、2003年末までに北京のデザイン会社Techfaithと共同出資の携帯電話設計会社を設立する。

 中国国内での3Gサービスは、開始時期のめどがいまだ立たない状況だが、先行投資により競合他社を引き離す考えだ。

 現行の2.5G関連でも、既に中国市場に投入済みのカメラ付き携帯電話に加え、GSM規格準拠の携帯電話を2004年春までに10機種以上発売する。2003年11月には、24時間対応の「お客様相談室」を中国で開設し、顧客満足度(CS)の向上を図る。また、NECグループ全体の携帯電話生産計画を管理する「上海オペレーションセンター」を2003年8月に設立しており、中国や欧米市場向けモデルのサプライ・チェーン管理(SCM)体制を確立した。

「昨年比5倍の当初目標、さらに上回るペース」

 金杉社長は2003年4月の決算発表会で、2002年度(2003年3月期)の海外(日本以外)の携帯電話販売台数が90万台だったと説明。「2003年度は5倍の台数を売り上げる」と宣言していた。同氏によると、2003年度は「現状ではそれを上回るペースで伸びている。2002年度は海外市場向け携帯電話の台数比率が20数%だったが、これも伸長している」と好調ぶりをアピール。主に欧州と中国市場の販売好調が寄与しているという。

 中国での3G事業展開の見通しについては、「表敬訪問した信息産業部の上級幹部は『3Gの技術規格については各オペレータが決めることだ』と発言している。(W-CDMA、CDMA2000 1x、TD-SCDMAの)どれになるか、一概には決まらない」(金杉社長)とコメント。その上でNECとしては、W-CDMA規格に開発資源を集中する方針だ。「仮にTD-SCDMAなど他の規格が主流になってきたら、W-CDMA関連の開発資源をシフトすることで対応可能であり、心配していない。当面は一規格に集中して開発を進めることで、市場に貢献したい」(NECの中村勉取締役常務)としている。

「他社の3G、製品が市場に出ていない」

 事業戦略発表会で中村常務は、他の携帯電話メーカーの3G戦略に対して「製品発表はしているが、本当に製品が市場に出ているかを冷静に見てほしい」とけん制。欧州を中心に量産出荷を始めているNECの優位性をアピールした。とは言え「もちろん、各社とも努力して開発しているはずなので、製品コンセプトやアプリケーションを重視して一層の研究開発を進めたい」(中村常務)としている。

 また中国国内では現在、GSMやCDMA規格の携帯電話が生産過剰となり値崩れを起こし始めているが、「主に地場メーカーの生産拡大によるもので、低価格の製品で問題が出ている。NECが主眼を置いている中~高価格帯の製品はむしろ品薄だ。今後、市場が求めるならば低価格モデルもやるが、まずは中~高価格モデルでしっかりビジネスを確立していく」(中村常務)と語り、影響は小さいとの見通しを示した。

金子 寛人=北京支局特派員