経済産業省はソフトウエア工学の研究機関「ソフトウエア・エンジニアリング・センター(SEC)」を新設する構想を明らかにした。概要は日経コンピュータの既報の通りであり、早ければ来年4月にも、情報処理振興事業協会(IPA)内に設置する。

 SECには、大学や民間企業からの出向者を集め、ソフトウエア工学の最新技術の研究開発や、開発した成果の民間への技術移転を進める。さらに、高度なソフトウエア工学の技術/手法を取得した人材育成の基盤としての役割も持たせ、日本のソフトウエア産業の国際競争力向上を狙う。

 経済産業省は来年度概算要求のなかで、SEC新設に関する予算「産学連携ソフトウエア工学実践拠点の整備」を盛り込んだ。要求額は27億5000万円である。このうち5億5000万円を、SECを設置するIPAに振り分ける。IPAへの予算は、SEC設置にかかわる人件費や設備費用などが用途。残りの22億円は経済産業省直轄の事業費である。SECで行うプロジェクトで外部への委託の必要性が生じた時などに充当する。

 すでに経済産業省は10月、SECへ引き継ぐことを想定して、「組み込み版CMM(能力成熟度モデル)」の開発を目的とする委員会を立ち上げた。NECや東芝など大手メーカーの研究者を20人ほど集め、組み込み向けソフトウエアの開発に特化した日本独自の手法を確立する。

 SECは、モデルとする米カーネギーメロン大学ソフトウエア工学研究所(CMU-SEI)など、海外の研究機関と密に連携を取っていく。9月中旬にはIPAの理事長や経済産業省の担当者などがCMU-SEIを訪問し、日本のSECとCMU-SEIが協力していく合意を取り付けた。「予算のうちいくらかをCMUなどに払って、包括的な技術アドバイスや人材の提供などをしてもらうことも検討中」(経済産業省)である。

井上 理=日経コンピュータ