主にLinux開発者の支援を手掛けるNPO(非営利団体)の米OSDL(Open Source Development Lab)のスチュアート・コーエンCEO(最高経営責任者、写真)が来日、日経コンピュータの取材に応じた。

 OSDLは所有する検証施設を開発者に開放したり、開発者に対してLinuxの関連の情報をインターネットなどを通じて公開している。2002年には横浜に検証施設を開設した。コーエンCEOは「Linuxが日本における“ソフトの輸入超過”を打破する」と主張した。取材の要旨は以下の通り。

――日本企業にとってLinuxを使うメリットは?
 日本には7000億円という大きなソフトウエア市場がある。しかし、ソフトウエア料金の輸出入は70対1で輸入超過だ。その90%以上が米国に流れている。

 これに対し、Linuxはどの企業にも属さないので大いに利用してビジネスにつなげてもらいたい。例えば、Linux上で動くミドルウエアやアプリケーションの開発などでがんばってほしい。また、日本政府が進めている、日本・中国・韓国共同のLinuxベースのOS開発プロジェクトはOSDLとしても支援したい。

――SCOの訴訟問題が取りざたされている。Linuxの利用拡大に支障はないか。
 まったく問題がない。Linuxは1社の訴訟に左右されるようなものではない。非常に強いモメンタム(勢い)になっている。事実、SCOの問題があったからという理由でLinuxを扱うことを止めた企業はいないではないか。

 この問題に関しては、OSDLとしても法律の専門家に頼み、ポジション・ペーパーQ&A文書を公開している。

――Linuxの生みの親であるリーナス・トーバルズ氏がOSDLに加わった。どんな変化があったか。
 OSDLがこれまで以上にコミュニティと親密な関係になった。しかし、彼と私たちの役割は今までと変わりない。トーバルズ氏はLinuxコミュニティのトップであり、私たちのミッションは、次のカーネルに盛り込むべき機能を研究する開発者の支援だ。コミュニティに対して機能の提案はするが、採用の決定権はコミュニティにある。

――OSDLの最近の活動は?
 開発面では、より大規模の利用に耐えられるようなLinuxの機能拡張に注力している。データセンターLinux(DCL)、キャリア・グレードLinux(CDL)という二つのLinuxに関するワーキング・グループを昨年に設置した。DCLは企業の基幹系に耐えうるLinuxで、CDLは通信業者向けのLinuxだ。これらのワーキング・グループで開発した機能の一部は次バージョンのカーネル2.6に盛り込まれる。

 また、米国では7月からユーザー企業のカウンシルを発足させた。Linuxのユーザー企業に集まってもらい、Linuxに取り込んでほしい要求をヒアリングする。その要求をLinuxの開発に役立てる。日本でも来年の2月をメドに発足を検討している。

――Linuxの発展における日本企業の貢献はどうか。
 OSDLにとって日本は重要な意味がある。NEC、東芝、日立製作所、富士通、ターボリナックス、ミラクルリナックスなどの日本企業がLinux開発に参加し、貢献している。9月25日付でNTTデータ先端技術もメンバーに加わった。横浜の検証施設では7~8の機能拡張プロジェクトが常に動いている。すでに4プロジェクトが終わり、Linuxコミュニティに提出された。米国では40~50のプロジェクトが動いているが、そのなかに日本企業も多く参加している。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ