米マイクロソフトは、デジタル家電や携帯機器の組み込み開発用プラットフォーム「T-Engine」で動作するWindows CE. NETを開発する。今年末にプロトタイプを公開する予定だ。同社は9月25日に開催した発表会で、東京大学教授の坂村健氏が会長を務めるT-Engineの普及団体「T-Engine Forum」に幹事会員として参加することも表明した。
米マイクロソフトの古川享副社長は「T-Engineは多くのメーカーに支持されており、その豊かな市場性に期待している」と話す。同社は、携帯電話機や情報家電向けOSの市場を巡って競争してきた“かつての敵”と手を握ることで、家電業界へのWindows CE普及に向け体制の立て直しを図る。
一方、坂村教授は「過去に米国政府の介入で教育用パソコン向けの国産OS開発が失敗したため、私がマイクロソフトと対立しているという人がいるが心外だ。T-Engine Forumはオープンな組織であり、マイクロソフトの参加を歓迎している」と語った。坂村教授と古川副社長は、今年2月から両OSの融合についての技術的検討を進めてきた。米マイクロソフトは、坂村教授が率いる無線タグ関連技術の標準化組織「ユビキタスIDフォーラム」への参加も検討している。
T-Engineは、組み込み用OS「μITRON」を基に開発したOSカーネル「T-Kernel」を中心に、CPUや基板、対応するドライバをセットにしたものだ。膨大な工数を要する組み込みソフトウエアの開発環境を標準化し、その流通と再利用を促すのが目的である。T-Engine Forumには、国内外の電機メーカーやソフト会社など約300社が参加している。
米マイクロソフトが開発しているT-Engine向けのWindows CE.NETは、このT-Kernelと同じCPU上で協調動作する。例えば、DVDレコーダ用の組み込みソフトを開発する場合、モーターの制御など高いリアルタイム性が必要になる部分はT-Kernel、電子番組表など表現力を要する部分ではWindows CEを使う。
T-Engine Forumは、今年3月にT-Kernel上で動作するLinux「T-Linux」の開発を表明済みで、今年末に成果を公開する予定である。T-LinuxはT-Kernelの上で動作し、メモリー空間やデバイス・ドライバを両OSで共有する。これに対して、今回米マイクロソフトが発表したWindows CEはT-Kernelと並列に動作し、これらの資源を共有しない点で異なる。「発表までに残された開発期間が短いため」(古川副社長)であり、将来はより緊密な協調動作を目指すという。