「当社のCRM(顧客関係管理)ソフトを導入する企業は増えているが、全社的に利用している例はまだ少ない。企業の収益力向上といった真のメリットを享受するには、全社的に導入して経営判断に生かすことが必要だ」。米シーベル・システムズ ライフサイエンス部門で医薬品・バイオテクノロジを担当するマット・ワラック ジェネラル・マネージャー(写真)はこう語る。

 ワラック・マネージャーが担当するシーベルの医薬品業界向けCRMソフト「Siebel Pharma」のユーザー数は、日本で約30社。参天製薬、シオノギ製薬、日本新薬、バイエル薬品などが利用しているという。しかし、そのうち約20社はSFA(営業支援)用途での導入が中心で、全社的に利用している例はまだ少ない。

 米シーベルが主に米国企業に対して最近実施した導入効果の調査でも、効果が「業務の効率化」にとどまっている企業が多かった。例えば、問い合わせにかかる時間の短縮、医師への訪問頻度の増加などだ。「現段階では、CRMソフトを使った新しい業務の流れを学習している段階の企業が多い。CRMソフトの使い方に慣れて、経営判断に生かすことができるようになると、主力製品のシェア拡大などのメリットが出てくるだろう」(ワラック・マネージャー)。

 ワラック・マネージャーは、Siebel Pharmaの国内ユーザーのなかでも「バイエル薬品は最も先進的な1社」と話す。「営業、マーケティング、製品開発の各部門で顧客からの情報を統合管理するとともに、経営陣がよりよい決断を下せるような試みをしている」というのが理由だ。営業担当者が病院の医師から受けたクレームを製造担当が改善に役立てる、医師のニーズを研究開発部門が新薬開発に役立てるといったことを狙う一方で、経営陣が全体を見渡して経営戦略を立案できるような仕組み作りを進めているという。

坂口 裕一=日経コンピュータ