米IBMで教育産業向けビジネスの責任者を務めるショーン・ラッシュ ジェネラル・マネジャー

 「小・中学校や高校、大学といった教育分野は、ITの導入で革新的な効果が見込める。ITを使えば、授業についていけない生徒を救うことだってできる」。米IBMで教育産業向けビジネスの責任者を務めるショーン・ラッシュ ジェネラル・マネジャー(GM)は、こう強調する。

 ショーンGMが指摘する、教育現場におけるITの導入方法とそのメリットは、次のようなものだ。まず講義をデジタル・コンテンツとしてライブラリ化することで、いつでもどこでも希望の授業を受講できるようになる。ただ単に受け身で講義コンテンツを見るだけでなく、疑似体験ができるシミュレーション形式のコンテンツを作成するのも可能だ。通常の授業形態でもITは生かせる。理科の授業では生物の画像データを、体育であれば競技の動画を生徒に見せたりすることで、従来の紙データよりも分かりやすく、いろいろなことを説明できる。

 ショーンGMは、「教育現場にITを導入するというと、遠隔地で授業を受けている学生の姿を真っ先にイメージするかもしれないが、実際にはもっと幅広い使い道と大きなメリットがある」と話す。「講義の内容をデジタル化すれば、自分が分からなかったところを繰り返し見ることも簡単だ。生徒一人ひとりが、自分の理解のスピードに合わせて学べるようになる」と続ける。これに対して従来型の授業では、生徒全員の到達度合いを見ながら、平均的なスピードで進めざるを得ない。「ついていけない生徒は、どんどん落ちこぼれていってしまう」(同)。

 教育現場へのIT導入には課題もある。ITを実際に活用できる教員の養成、IT資産を管理するシステム要員の育成、そして費用の確保だ。ショーンGMは、「焦らず時間をかけて取り組めば、ITは必ず理解できる。IT資産の管理については、アウトソーシングを利用するのが現実的だ」と話す。費用面については、「政府主導で一定の予算確保に取り組むべき。米国では連邦政府が小・中学校のIT導入を金額的に支援する制度ができている」と話す。