大日本印刷と音声関連の技術開発を手掛けるアニモは9月3日、「声紋」を使った認証を行うICカード「DNP Standard-9 ADVANCE-VP」を開発したと発表した。今年12月に出荷を始める。

 声紋認証は、バイオメトリクス認証(生体認証)の一つである。マイクなどから入力した人間の声をいくつかのフレーズに分解し、その周波数や長さをもとに声質や癖といった特徴(声紋)を捉えて、登録済みの声紋データと照合する。声紋は電話の音声からも取り出すことができ、銀行のコールセンターなどでユーザー認証に使われている。

 DNP Standard-9 ADVANCE-VPは、1枚のICカード内に声紋データと認証アルゴリズムを搭載する。マイクや電話からの音声をパソコンに取り込み、その中の特徴的な部分を抽出してICカードに送る。そのデータをICカードに登録済みの声紋データと照合することで、本人であることを認証する。声紋データの容量は5Kバイト。照合処理をICカード内部で完結する仕組みを採用し、声紋データの流出防止を図った。

 価格は100ユーザーの場合、専用ソフトウエアとマイクをセットにして380万円。販売は大日本印刷が担当する。

 両社は将来、同様の声紋認証機能を第3世代携帯電話に挿入して使うUIM(User Identity Module)カードに搭載することも検討している。携帯電話を使った電子商取引の際に、現在のPIN(暗証番号)よりも安全性の高い個人認証を可能にする。指紋センサーよりもユーザーが感じる抵抗感が少なく、携帯電話機に搭載するコストも低いことが利点としている。

本間 純=日経コンピュータ

●声紋認証、指紋認証などバイオメトリクス認証の最新動向は、日経コンピュータ9月8日号「テクノロジ・フロンティア――バイオメトリクス」に掲載します。