「ソフトウエア開発ツールのビジネス規模が小さい? 私は決してそうは思わない」。日本IBM ソフトウェア事業ラショナル事業部担当の齋藤肇氏は、8月27日に同社が開催した「IBM Rational」ブランドの新ソフト製品発表会でこう強調した。

 IBM Rational製品は、米IBMが今年2月に買収した米ラショナルソフトウェアの開発ツール群のこと。UML(Unified Modeling Language)モデリング・ツールやテスト・ツールが主力製品である。齋藤氏は7月31日まで、ラショナルの日本法人である日本ラショナルソフトウェアの社長を務めていた。日本ラショナルは8月1日付で日本IBMのソフトウェア事業部に統合された。

 齋藤氏は、「当社の調べでは、ビジネス系あるいは組み込み系のアプリケーション開発にかかわるエンジニアが開発ツールにかける費用は、一人あたりのトータルでおよそ200万円。いま日本でソフト開発に携わるエンジニアの数は、ビジネス系が約60万人、組み込み系が約40万人の計100万人近いとみられる。そのうち2割から3割が当社の製品を使ったとしたら、金額は膨大になる」と続ける。

 この数字通りなら、ビジネス系または組み込み系システム向けの開発ツール市場で2割のシェアをとれば、売り上げ4000億円が見込めることになる。ただし、日本IBMはRational関連の売上規模を明らかにしていない。この発表会に同席したマイクロソフトの平井康文 取締役エンタープライズビジネス担当(元日本IBMソフトウェア事業部長)は、同社の開発ツール「Visual Studio. NET」を使う開発者の数について「Visual Basicユーザーを含めて、日本で約30万人」と語った。

 今回、日本IBMが発表したのは、「IBM Rational XDE」ファミリをはじめとする30製品の機能強化版。Rational XDEは、日本IBMのJava開発ツール「WebSphere Studio」、オープンソースの開発ツール「Eclipse」、またはVisual Studio .NETの開発環境内から利用できるツール群である。UMLモデリング・ツール「IBM Rational XDE Developer v2003」(1ユーザーあたり50万4000円から)、テスト・ツール「IBM Rational XDE Tester v2003」(同51万5000円から)などで構成する。XDE Developer v2003は新たに日本語化したほか、Eclipseと統合させた。XDE Tester v2003は日本初登場(Visual Studio .NETには対応していない)。

 製品の出荷は9月24日から。日本IBMの堀田一芙ソフトウェア事業 常務執行役員は、「今回は1年半ぶりのバージョンアップ。前回は日本語化に6カ月から12カ月を要した。だが、今回は当社の大和事業所が日本語化に協力したこともあり、米国での出荷から3カ月遅れで出荷できた」と話す。

 この発表会には、富士通の石田安志ソフトウェア事業本部常務理事も参加。同社のJava開発ツール「Interstage Apworks」にXDE Developerを組み込んだ「Interstage Apworks Modelers-J Edition V6.0」と「同Enterprise Edition V6.0」を10月に出荷することを明らかにした。

田中 淳=日経コンピュータ