「E-R図はデータベース設計のためのものだと思われがちだが、それだけでない。企業活動全体を分析することにも利用できる」。こう語るのは、グローバルフォーカスの小見山昌雄コンサルタント事業部長だ。同社はオリエントコーポレーション(オリコ)が富士通などと共同で設立したシステム会社。小見山部長は、E-R図を使った業務分析やシステム設計技法のコンサルティングを手がけている。

 E-R図は人や出来事といった実体(エンティティ)を洗い出し、それらがどう関連(リレーション)しているかを表現するためのもの。データベース「社員や受注といった企業内の業務に関するE-R図を描けば、業務全体を把握するのに大きな効果を発揮する」と小見山部長は説明する。

 業務全体を把握してビジネス・プロセスの改善などに利用するには、複数のメンバーで議論する必要が出てくる。そこで、小見山部長は、E-R図を容易に作成・理解できる技法として「T字型ER技法」の普及に力を入れている。

 T字型ER技法は、企業で使っている伝票の項目やシステム画面の表示項目をもとにエンティティを作成して、E-R図を描いていくもの。コンサルティング会社 エス・ディ・アイ)の佐藤正美氏が考案した。伝票の項目などから、図の表記ルールがシンプルなこともあり、「2日ほどで基本的な知識が身につくため、すぐにE-R図を使った業務プロセスの改善を複数メンバーで検討できるようになる」(小見山部長)という。

 同技法は、内部をT字型に区切った長方形でエンティティを表現する点が特徴だ。エンティティに含まれるデータ項目を「伝票コード」や「顧客番号」といった固有データを特定する項目と、それ以外の項目に区別して表記する。オリコや住友電工などがシステムの設計段階で利用している。

西村 崇=日経コンピュータ