「企業の海外拠点や外出先から本社と通話するときに、どんなIP電話機やパソコン同士でも相互に通話できるようになる」。セキュリティ製品を販売するアズジェントの杉本隆洋代表取締役社長は、8月29日から販売するIP電話のアプライアンス装置についてこのように説明する。

 同社が販売するアプライアンス装置の名称は「Applico SIP RTC スイッチ ASA3800(以下ASA3800)」。インターネットと社内LANの境界部分に設置する。例えば、本社と海外拠点や、本社と外出先の間などでの通話に利用する。

 ASA3800の特徴は、G.711やG.723など異なる音声符号化方式(コーデック)を使うIP電話機/パソコン間であっても通話ができることである。利用するコーデックが違うIP電話機/パソコン間では通話ができないが、ASA3800がその仲立ちをすることで通話を可能にする。

 通話の品質を向上させる機能も備えている。一つはIP電話機が複数のコーデックを利用できる場合、ASA3800は20ミリ秒ごとに通話に最適なコーデックを選択し、動的に切り替える機能。もう一つは、UDP(User Datagram Protocol)で伝送される音声パケットの順番を正しく並べ替える機能だ。通常UDPのパケットの順番が入れ替わった場合、後ろに回ったパケットは破棄されてしまう。そうなるとデータが途切れ、音声の品質が悪化する。ASA3800は受け取ったUDPパケットの順番を並び替えてからIP電話機/パソコンに送るため、音声品質の悪化を最小限に食い止めることができる。

 IP電話の通信を制御するプロトコル(呼制御プロトコル)にはSIP(Session Initiation Protocol)を採用している。米マイクロソフトのWindows XPに搭載しているWindows MessengerもSIPを利用しているため、社外からWindows Messengerを使って、社内のIP電話機と通話することが可能だ。

 ASA3800の価格は980万円から。1台で8000ユーザーまで同時に接続できる。2003年2月から、シンガポールテレコムやチャイナユニコムなど海外の企業でベータ版の実証実験を行っている。

松浦 龍夫=日経コンピュータ