ファクティバのハートCEO 「2000年当時、Webサービスによる情報配信の開始を決断したのは、大きな賭けだった」――。米英の通信社が共同出資する情報配信会社、ファクティバ ダウジョーンズ&ロイターのクレア・ハートCEO(最高執行責任者)は、同社の設立直後に社内で交わされた激論を振り返って語る。

 ファクティバは、米ダウ・ジョーンズと英ロイター・グループが、新聞社や金融機関以外の顧客開拓を狙い、両者の情報システム開発部門を母体として発足した会社である(日本法人のWebサイト)。有料のニュース・サイト運営と、企業内ポータルへの情報配信が事業の柱。毎日新聞、読売新聞を含む8000種類の媒体の情報を22カ国語で配信している。ハートCEOによれば「30年前から2分前までの」情報を検索可能にしている。

 ハートCEOは「対応する商用ソフトがほとんどない状況で、Webサービスを採用するのはリスキーに思えた」と語る。しかし、Webサービスの採用を強く主張したのは、金融情報サービス構築で腕を磨いた百戦錬磨の技術者たち。XMLを使えば企業内ポータルへの接続が格段に容易になり、新たなビジネスの可能性が広がると考えたからだ。結局、システムの大部分を自社開発した。

 まだ企業内ポータル向け事業からの収益は全体の2割にも満たないが、米IBM、米プライスウォーターハウスクーパースなどの大企業で導入が進んでいるという。日本では全日本空輸など、海外拠点を多く持つ企業が既に顧客となっている。

 「我々は技術企業だ」と話すハートCEOは、開発の手を緩めない。ニュースだけでなく、社内の業務情報を関連付けて一覧表示できる「Factiva Fusion」と呼ぶソフトウエア・モジュールを開発した。米IBM、米オラクルと販売パートナ契約を結び、企業内ポータルの普及を促す考えである。さらに米マイクロソフトとも、統合ビジネス・ソフト「Office System」への情報提供で提携済み。WordやExcelなどの画面から、マウスで選択したキーワードの関連ニュースを検索できる。

 「情報配信サービスの多様化には、Webサービスが不可欠だ。今、自信を持って我々の選択が正しかったと言える」(ハートCEO)。

(本間 純=日経コンピュータ)