「グループウエアを導入した際、従業員食堂の日替わりメニューを毎日載せることにした。グループウエアは毎日見てもらわなければ意味がないと考えたからだ。これがユーザーの拒否反応を和らげるのに一役買った」。ホテル西洋銀座の伊藤敏朗システム マネジャーは新システム導入時の工夫をこう語る。

 ホテル西洋銀座は今年4月、VDSL(超高速DSL)を利用して客室にインターネット接続環境を整えたのを機に、バックオフィスにもLANを構築してグループウエアを導入した。グループウエアは「サイボウズ ガルーン」。これまでは、宿泊予約、購買、経理などの業務で個別に情報システムを使っていたが、部署をまたがるLANはなかった。同ホテルの従業員は約200人。そのうち約半数はバックオフィスの業務にかかわる。

 グループウエアの導入を決めたのは、情報を一元管理することで、業務の引き継ぎや連絡を正確にしたかったからだ。同ホテルのバックオフィスでは従業員一人に一つの机を確保していない。従業員が交代制で勤務しているうえに、一人に一つずつ机を用意すると大量の設置スペースが必要になるからだ。グループウエアの導入以前は、連絡帳やメモなどで引き継ぎや連絡を済ませようとしても、情報が不正確になったり伝わらないことがあった。

 グループウエア導入のメリットを最大限に生かすには、「従業員全員が毎日使わなければ意味がない」と伊藤マネージャーは考えた。同ホテルにはパソコンの扱いに不慣れな従業員も多い。パソコンに対する一人の拒否反応が従業員全体に広がって、導入したグループウエアが結局使われない、という事態を恐れた。

 そのため、伊藤マネジャーによる工夫が冒頭の日替わりメニューの掲載である。このほか、導入時に運用ルールの項目を一つに絞った。「運用ルールは“休暇の取得は共有スケジュール表に記入すること”の1点だけ。初めからあれこれとルールを決めたら誰も使わなくなると考えた」(伊藤マネジャー)。

 こうした工夫の甲斐もあり、現在ではほぼすべての従業員が毎日使うようになった。「掲示板への書き込みも多くなってきたので、カテゴリ分けをする、といった運用ルールもそろそろ必要になった」と伊藤マネジャーはいう。7月には、運用ルールを決めるための有志の集まり「運用向上委員会」が発足した。

(矢口 竜太郎=日経コンピュータ)