東京都は、電子申請受付から庁内決裁、審査結果の申請者への通知まで、一連の業務をシステム上で処理する仕組みを作った。申請受付システムといったフロントオフィス向けと、決裁システムのようなバックオフィス向けシステムを連携した例は、全国の自治体でも珍しい。

 東京都はまず、多摩地域(23区や島部を除いた地域)の食品営業許可の変更/廃業申請業務に対して、システムを本格的に活用し始めた。「食品営業の許可業務からシステム連携を開始したのは、変更と廃業だけで年間に1万2000件にも上る申請があり、業務改善効果が大きいと判断したからだ。このうち4割をインターネット経由で受け付けるようにするのが目標だ」と東京都健康局総務部総務課の和田哲情報システム担当係長(写真)は説明する。

 従来は、例えば大量の自動販売機を所有する飲料メーカーの代表者が変わる場合、変更申請・決裁業務に都と飲料メーカーの双方に大きな負荷がかかっていた。都は申請書類を決裁業務管理(台帳管理)システムに再入力しなければならなかった。飲料メーカーは12カ所ある多摩地区内の保健所へ担当者が行き、自動販売機の所有者に変更があった旨の申請書類を作成・提出する必要があった。

 申請受付システムと決裁業務管理システムを連携したことで、申請受付システムのWebページから決裁業務管理システムのデータベースを呼び出せるようになった。企業側は変更部分のみをWebページ上で修正すればよい。都は受け取った申請データを再入力の手間をかけずに、そのまま決裁業務管理システムで処理できる。「今後は、食品営業の決裁業務管理システム以外のバックオフィス・システムも連携することを検討中だ」と和田係長は語る。

 東京都は、システム連携のためのデータ変換システムを構築し、申請受付システムと決裁業務管理システムの中間に配置した。データ変換システムは、インフォテリアのシステム連携ソフト「ASTERIA」を利用して実質3カ月で構築した。システム間のデータ仕様の違いを吸収できるように、データ項目を変換・修正するようにした。連携システムの構築は、NTT東日本が決裁業務管理システムのリプレースと共に東京都から受注し、開発は横河情報システムズが担当した。ちなみに、新規受付は本人確認や店舗構造の審査が必要なため、今のところインターネット経由での申請は受け付けない。

広岡 延隆=日経コンピュータ