「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)は、細切れ(fragmentation)になり、価格が下がる(price deflation)」──米フォレスター・リサーチのジョン・C・マッカーシー、リサーチ部門グループ・ディレクタ(写真はこちらを参照)は、BPOの動向をこの言葉で総括した。富士通エフ・アイ・ピーが7月10日、11日に東京で開催した初のプライベート・ショウ「FIPソリューション&アウトソーシングフェア2003」の特別講演でのひとこまである。

 マッカーシー氏は北米にあるユーザー企業約200社に電子メールでBPOに関する調査をし、82社から回答を得た。12社には直接取材、別途BPOを提供するベンダー35社にも取材をした。その結果はレポート「BPOの細分化された未来(BPO's Fragmented Future)」として7月下旬に発表する予定。7月11日に行った講演ではその内容を発表に先立って説明した。

 ユーザー企業のBPOに対する態度は大きく三つに分けられる。34%は「今後2年は計画もないし興味もない」、36%は「調査中か興味を持って見ている」、31%は「実施中、試験運用中、または企業戦略の鍵となる存在と考えている」である。興味を持っている分野で上位にあったのは、人事(Human Relations)、顧客サービス、調達、会計。一方で、営業や製品開発をアウトソーシングしたいというニーズは少なかった。BPOに使った、または使う予定の金額を尋ねた回答では、2002年には300万ドル以上が15%しかいないのに、2004年では37%。BPO市場の伸びは期待できると言えそうだ。「ある世界規模の化学会社は米メロンHRソリューションズに人事の仕事をアウトソーシングしてコストを10%下げ、100人を削減した。ある航空会社はインドのスペクトラマインドに予約センターをアウトソーシングして2600万ドルを節約した。BPOはコスト削減に寄与する力が確かにある」とマッカーシー氏は語る。

 「とはいうものの、大きな商談は数えるほどだし、ベンダーはあまり多くの顧客を獲得できていない」と彼は続ける。ユーザーのニーズははっきりしているが、ベンダーの体制がそれに追い付いていないからだ。その解決策が「細分化(fragmentation)」だ。「たとえば人事業務は、23のサブタスクと230のプロセスに分けられる。これくらい細分化しないと、ユーザーがコストを算出して比較することも、ベンダーと価格交渉をすることもできない。ベンダーとユーザーが協力して細分化を推し進めることが、BPO成功の鍵になる」(同)。

 講演の後に、北米と日本での違いは何か?と尋ねてみた。「よりタイトなコントロールを求める点に違いはあるが、日本企業でもグローバルなビジネスを展開している会社はBPOを始めている」という答が返ってきた。日本は従業員の解雇が難しい点が特殊では?という質問は、あまり的を射たものとは言えなかったようだ。「それは仏独でも同じ。早期退職プログラムを使う、アウトソーサーへ転属させる、再教育を施すといった方策を採ったうえで、BPOは進む」というのが彼の意見だった。

(原田 英生=日経コンピュータ)