7月9日付の日本経済新聞の1面トップに「政府、リナックス採用」の文字が躍った。だが、Linuxで開発されると報道された全省庁の人事・給与システムの発注者である人事院によれば、現時点でLinuxは有力な候補の一つに過ぎない。

 確かに6月30日、沖電気工業、日本IBM、富士通の3社が共同で、全省庁で利用する人事・給与システムの調査分析、概要設計、詳細設計を1億8800万円で落札した。3社の提案はサーバーのOSとしてLinuxを採用することを前提としている。このシステムは、人事院が中心となって全省庁の要望を取り入れて構築し、2005年をメドに稼働する予定だ(詳細は「政府が全省庁の人事・給与システムを刷新」を参照)。

 だが、人事院は「3社に設計を委託するからといって、Linuxを全面採用すると決めたわけではない。調査分析、設計の過程で、システム要件とパフォーマンスの検証を行って、最適なOSを決定する」と慎重な姿勢を崩さない。

 沖電気、日本IBM、富士通の3社が引き続きシステム構築を受注できるかどうかも実際には未知数だという。人事院は「LinuxをOSに選んだ提案を評価したのは、ベンダー依存を断ち切りたかったからだ。特定ベンダーに有利になるような形で、今後の設計作業が進むようなことは絶対にない」としている。

(広岡 延隆=日経コンピュータ)