「村井君とは喧嘩をしていない。オートIDセンターとも対決してない」。

 7月4日、ネットワーク社会の課題を議論する「世界情報通信サミット」で、国内におけるICタグのキーパーソン二人の対談が実現した。ユビキタスIDセンターの代表を務める坂村健東京大学教授と、米オートIDセンターの国内における研究の責任者である村井純慶応大学教授の対談だ。

 坂村教授は対談が始まるとすぐに、冒頭のように発言。両センターの対抗の構図を改めて否定した。村井教授も「どちらが主導権を取るかは意識しない方がいい」と同調した。

 さらに村井教授は「坂村先生には『慌てるな純ちゃん』、『君が橋渡しになってくれ』といつも言われている」と打ち明けた。これについて坂村教授は「ICタグの件では私の研究所は世界で最高。技術的には10馬身も先行している。村井君には、この技術を海外に伝える役になって欲しい」と“真意”を説明。「『慌てるな』というのは、コンピュータだけでなく法制度やセキュリティ・ポリシーの面でもディスカッションする必要がある。これには時間がかかるということ」と続けた。

 坂村教授と村井教授の今回の対談は、多くの点で同じ見解であることもわかった。「ICタグには無限の可能性がある」ことや、「ICタグの展開において日本が重要な役割を担う」という点で、両氏は意見の一致をみた。

栗原 雅=日経コンピュータ