「コンピュータ囲碁の世界大会を開催することで、岐阜県がどれだけIT産業の育成に力を注いでいるかをアピールしていく。この活動をITベンチャー企業の誘致につなげていきたい」。ITベンチャー育成や研究開発支援などを推進する岐阜県の財団法人、ソフトピアジャパンの渡辺貴代好ビジネスサポートセンター グループリーダーはこう意欲を見せる。

 コンピュータ囲碁は、人間の棋士同士が対局するのと同じように「コンピュータ棋士(囲碁プログラム)」同士が対局して勝敗を競うこと。コンピュータ・チェスやコンピュータ将棋などと同様に、AI(人工知能)技術のゲーム分野への応用事例として一部研究者の間で注目を集めている。

 ソフトピアジャパンは8月2日と3日に開催される「世界コンピュータ囲碁大会 岐阜チャレンジ2003」を後援する(主催は、学術的非営利団体のコンピュータ囲碁フォーラム)。会場は岐阜県大垣市のソフトピアジャパン・センタービル。米国やカナダ、中国など海外を含む17チームが参加する。入場者は、ホールの大型スクリーンでコンピュータ棋士同士の対局を観戦できる。一部の対局では、プロの棋士による解説も付く。

 期間中に、(1)岐阜県高等学校囲碁大会、(2)はこだて未来大学の松原仁教授らによるAIセミナー、(3)高校生を対象にしたゲーム・クリエータ養成AI講習、などもソフトピアジャパン・センタービルで実施する。(1)で優勝した高校生と、世界コンピュータ囲碁大会で優勝したコンピュータ棋士による公開対局も予定している。参加料は関連イベントを含めて無料。

 今回、ソフトピアジャパンで世界コンピュータ囲碁大会を開催することになったのは、「資金や施設面の援助を得て、規模の大きなコンピュータ囲碁大会を実施したい」という主催者のコンピュータ囲碁ファーラムと、「IT関連の人材育成や情報発信につながる機会を増やしたい」と考えていたソフトピアジャパンの利害が一致したため。囲碁ソフト「銀星囲碁」の開発元であるシルバースタージャパンがソフトピアジャパンに参加していることが、きっかけになった。

 ソフトピアジャパンには現在144社が参加。就労者数は約1500人に達する。2005年に5000人に増やすことを目指している。「正直なところ、最近はベンチャー企業の誘致に苦労している。だが、光ファイバ網が整備されているなどインフラは充実しているし、低料金の貸しオフィスや様々なベンチャー支援制度もある。ぜひ全国のITベンチャー企業にソフトピアジャパンのよさを知ってもらい、大垣に来てほしい」と渡辺グループリーダーは訴える。

田中 淳=日経コンピュータ