企業などから無償で譲り受けた中古パソコンを再生し、教育機関などに寄付している非営利団体(NPO)の「アインシュタインプロジェクト」は、BTRON仕様OS「超漢字4」を中古パソコン向けに採用した。6月18日から、三重県志摩郡阿児町の神明小学校を皮切りに、教育機関に向けて同OSを搭載したパソコンの提供を開始した。

 BTRONは、東京大学の坂村健教授を中心とするTRONプロジェクトが開発した、パソコン向けOS仕様。比較的操作が容易で動作が安定しているとの理由から、一部の小学校・中学校が教育用パソコンに採用している。今回、アインシュタインプロジェクトがBTRON仕様のOSを採用したのは、教育用途での実績に加えて、ソフトウエアの譲渡に伴うライセンス問題の回避と、コスト削減という狙いがある。

 中古パソコンのほとんどは、Windowsと様々なアプリケーションを搭載した状態で企業などから提供される。しかし持ち主が代わった際に、次のユーザーがパソコンに搭載してあるソフトウエアを引き続き使うと、ソフトウエア・メーカーとの間で著作権上の問題が発生する可能性が否定できない。

 この問題を回避するため、アインシュタインプロジェクトは中古パソコンのハードディスクの内容を完全に消去した上で、OSと関連アプリケーションを新たにインストールし直すことにした。しかし、予算に制約がある中では、Windowsを新たに購入することは難しい。そこで今回は、同プロジェクトの趣旨に賛同した、「超漢字4」の販売元のパーソナルメディアから製品の無償提供を受けることとした。こうすることで、OSの購入コストをかけずに中古パソコンを再生することが可能になった。

 なお、BTRON仕様のOS以外に、Linuxを中古パソコンに採用する動きもある。例えば、NPO「障害者の就労を支援する会(e-senior)」は、企業から譲り受けたパソコンにLinuxをインストールし、教育機関向けに提供する活動を今年5月に開始した。e-seniorは、障害者による中古パソコンの再生作業を手掛けるNPOである。

(本間 純=日経コンピュータ)