経済産業省CIO補佐官の野村邦彦氏(左)と葛西重雄氏  中央省庁の先陣を切って、5月29日から経済産業省にCIO(最高情報責任者)補佐官が誕生した。CIO補佐官は、同省における、業務改革や情報システム構築のアドバイスを行う。本来なら、経済産業省の情報化はCIOが全責任を負うべきである。だが現在、経産省のCIOは事務方のトップである事務次官が務めている。現実問題として同省の情報化を細かな点まで指揮するのは不可能だ。一方で、電子政府の実現に向けて開発すべきシステムが山積しており、CIOを補佐するITの専門家の確保は、同省にとって急務となっていた。

 今回、CIO補佐官に就任したのは2人。ともに出向である。野村邦彦氏(写真左)は日本IBM出身で、ニューメディア開発協会の主幹研究員を務める。葛西重雄氏はベリングポイントの公共関連サービス事業部シニアマネージャとして、電子政府の戦略立案やシステム開発のプロジェクトマネジメントを、1年半にわたって手掛けてきた。

 「2人の役割分担はケース・バイ・ケース」(経済産業省)だが、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)の推進といった組織全体に関わるものについては野村氏が、システムのパフォーマンス改善など個別プロジェクトに関連したものを葛西氏が主に担当するという。

 野村氏は「通常、業務改革には内部の抵抗があるもの。だが現在、官僚自身が非効率さを問題だと感じるようになっており、業務の改善を望んでいる。変革を進めるチャンスだろう。復活のきっかけとなった1993年からのIBMのリストラを肌で感じた経験を生かして、改革に取り組んでいきたい」と宣言する。葛西氏も、「官公庁の業務改善の取り組みは、まだ始まったばかりだ。民間の業務改善の手法を導入すれば、大きな効果が期待できる」と意気込む。

(広岡 延隆=日経コンピュータ)