米サン・マイクロシステムズは、Javaのサーバー向け標準仕様「J2EE(Java2 Platform, Enterprise Edition)」の新版1.4の正式な提供開始を今年第4四半期(10~12月)に延期する。米サンフランシスコで開催しているJava開発者向けカンファレンス「JavaOne」の初日にあたる6月9日(米国時間)に、同社が明らかにした。

 J2EE 1.4は、現行のJ2EE 1.3の次期版に当たる。XMLを利用してJavaからプログラムを遠隔呼び出しするための「JAX-RPC(Java API for XML-Remote Procedure Call)」、SOAPメッセージの送受信を可能にする「JAXM(Java API for XML Messaging)」など、Webサービスを利用しやすくするAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を中心に機能を強化する。

シュワルツ上級副社長  サンはJava関連の標準仕様を策定する組織であるJCP(Java Community Process)を通じて、2001年からJ2EE 1.4の策定を続けている。当初、J2EE 1.4の完成予定は「2002年後半」だった。ところが作業の遅れから、提供開始が「2003年第1四半期」に後退。さらに今年2月4日、サンはWebサービスの標準化団体である米WS-I(Web Services Interoperability organization)が策定した相互運用性ガイドライン「ベーシック・プロファイル」をJ2EE 1.4仕様に盛り込むと発表。同時にJ2EE 1.4の提供時期を「今年夏」にずらした。

 今回、サンがさらにJ2EE 1.4の提供時期を遅らせたのは、「WS-Iによるベーシック・プロファイルの作成が遅れているため」だと、サンでバイスプレジデント兼フェローを務めるグラハム・ハミルトン氏は説明した。同氏はさらに、「J2EE 1.4のベータ2版を今月中に提供開始する」とも語った。

 サンはJavaOne初日に、J2EE 1.4の次期版になる「J2EE 1.5」の構想も説明した。最大の狙いは「EoD(Ease of Development=開発の容易さ)」。EJBやJDBCなどJ2EEの主要技術を、開発者がより使いやすくなるよう強化する。このEoDは主に、Javaの標準仕様であるJ2SE(Java2 Platform, Standard Edition)の次期版1,5(コード名「Tiger」)で採用する「メタデータ」と呼ぶ機能を利用して実現する。メタデータはJava言語仕様の拡張機能で、プログラミングの効率化を狙ったものだ。

 J2EE 1.5ではこのほか、PHPのようなスクリプト言語とJavaを併用できる仕組みも実現する予定。J2EE 1.5はまだ初期計画段階で、提供時期は未定。メタデータを使うことから、J2SE 1.5より後になることは間違いない。J2SE 1.5は2004年の提供開始を目指している。

 JavaOne初日の基調講演に立ったサンのソフトウエア・グループを統括するジョナサン・シュワルツ上級副社長(写真)は、「現在、Javaの開発者は全世界で300万人いる。開発者を今後、1000万人、あるいは1500万人に増やすためには、Javaプラットフォームをよりシンプルで使いやすいものにしなければならない」とEoDの重要性を強調した。その一環として6月10日(米国時間)には、使い勝手を重視したJava開発ツール(Project Rave)を正式に発表する予定である。

田中 淳=日経コンピュータ、米サンフランシスコ発