ソフトバンクBBは5月、パッケージ・ソフトウエアの卸などを手がける営業部門で、約300名が利用するCRM(顧客関係管理)システムの導入を“完了”した。稼働開始は昨年4月だが、当初は機能を限定して導入。その後、ユーザーが慣れるに従って機能を段階的に開放してきた。「CRMシステムを使う文化を築き、担当者の間で活用が着実に進むこと」という目標を実現するためだ。そして今年5月、主要な機能はすべて使えるようにした。

 昨年4月の稼働直後は、利用できる機能を営業案件の入力、管理機能に限定した。営業グループ間で連絡事項をやり取りするメッセージ機能や、検索機能など、ほとんどの機能を利用できなくした。このほか、必要のないボタン類やメニューを表示しないように設定し、利用時にユーザーが混乱しないように配慮した。同時に、CRMシステムに営業活動のデータを入力すると、件数や内容に応じて人事評価に反映する制度も整えた。

 この後、四半期ごとにユーザーの利用状況を確認しながら、段階的に必要な機能を追加していった。「CRMシステムのユーザーである営業担当者のニーズを受けて、メッセージの送受信機能や、検索機能を段階的に開放していった。結果的にうまく活用が進んだ。機能を解放するスケジュールは、ほぼ当初想定していた予定通りだった」(ソフトバンクBBの竹田吉樹システム&サプライチェーン本部流通事業システム統括副本部長)。

 CRMシステムは、オニックス・ソフトウェアの「Onyx Enterprise CRM」を使って、約3カ月間で開発。Windows2000サーバー2台で構成し、それぞれでアプリケーションとデータベース(SQL Server)が動作している。構築費用は、ソフトウエア、ハードウエア合計で約1億円。

 CRMシステムの導入によって、現在では営業担当者間での情報共有が進んでいる。「セキュリティ製品の営業担当者と、別のセキュリティ・サービスの営業担当者が、共同で営業活動を展開する」、「担当者が営業担当企業を引き継ぐときの手間が削減できた」といった効果も現れ始めているという。「効果を金額に換算すると、導入にかかった1億円は、段階導入してきた約1年間で既に回収できた」(竹田副本部長)。

 今後は、営業以外の仕入れ部門や、同社にとって仕入れ先であるソフト・メーカーも利用できるようにする。「営業活動で得たノウハウを最大限に活用できるようにする」(竹田副本部長)のが最終目的だ。

坂口 裕一=日経コンピュータ