東京三菱銀行の田中CIO 「いままでシステム部門には、長期的な視点でシステム全体のアーキテクチャを描くという思想が欠けていた。街づくりに例えれば、江戸が自然膨張してできあがった東京に似ている。高速道路を作るとなれば用地買収に莫大な費用がかかる。同様に全体的な設計思想のないシステムは結果的に高コストになる」。東京三菱銀行のCIO(最高情報責任者)を務める田中將介常務は5月27日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催された「IBM Software World 2003」の基調講演でこう発言した。
 
 田中常務の発言は、企業システム全体の投資を最適化する「エンタープライズ・アーキテクチャ」の思想が不可欠ということを強調したものだ。目先のシステム案件だけにとらわれて新サーバーを次々に立ち上げたり、新技術に見境なく手を出したりすれば、結果的にシステム全体の維持・管理コストは膨らみ、システムの陳腐化やシステム障害にもつながり兼ねないというわけである。

 田中常務は理想的な企業システムの設計思想としてフランス・パリの街を例にあげる。「パリは都市全体の設計思想が整っている。企業システムも東京でなくパリを目指すべきだ」。

 東京三菱銀行は今年度から、エンタープライズ・アーケテクチャの思想に基づきシステム全体の投資最適化を目指す取り組みを本格化する。日本IBMのコンサルティング・サービスを利用する。

大和田 尚孝=日経コンピュータ

*日経コンピュータ2003年6月2日号では、東京三菱銀行 田中常務のインタビューを掲載してします。併せて参考にしてください。