Webページをテレビで表示すると一部しか表示できない。上段がテレビ、下段がパソコンのディスプレイ NECは5月26日、パソコン用に作成したWebページをテレビやPDA、携帯電話などでも見やすく表示する新技術「セマンティック・ズーム機能」を開発した。1年後をメドに実用化する。

 NECの片山博インターネットシステム研究所長は、「調査会社によれば2002年は、日本語のWebページだけで6000万ページを超えている。パソコン用、テレビ用などと個別にWebコンテンツを用意するのは限界がある」とし、こうした技術の重要性を訴えた。

 例えば、パソコン用に作成されたWebページをそのままテレビで表示しようとすると、ページの一部しか表示できないことが多い(写真上の上段がテレビ、下段がパソコンのディスプレイ)。これはパソコン画面の画素数に比べて、テレビ画面の画素数が少ないためである。またテレビ画面で全体を縮小表示すると、文字がつぶれて内容を読むことができなくなる。PDAや携帯電話などディスプレイが小さい端末も同じ問題を抱えている。

 新技術はこうした問題を解決する。Webページをテレビに表示するときは、ページのなかから見出し部分を自動抽出して、大きく表示する(写真下)。ユーザーが閲覧したい見出を選択すると、ズーム機能によって、選択した見出しと記事部分を拡大表示する。一連の操作にマウスは不要で、家電のリモコンや携帯電話などが備える上下左右のキー(十字キーと決定キー)で、できるようになっている。

 新技術のズーム機能を利用するためには、あらかじめWebページにXML形式のレイアウト情報を埋め込んでおく必要がある。これによって、見出しとそれに対応する記事部分がどこかや、十字キーを動かしたときにどの部分を選択したことにするか、といった指定をする。テレビやPDAなどに搭載するブラウザにも、プラグイン・ソフトの形で機能を追加する。

「セマンティック・ズーム機能」で見出し部分を自動抽出し、大きく表示 NECはプラグイン・ソフトや、Webページにレイアウト情報を簡単に付加するためのオーサリング・ツールを、1年後をメドに開発する。既存のWebコンテンツにレイアウト情報を自動的に付加する仕組みも開発中だが、「自動処理にどの程度の成功率があれば製品化できるか、調査が必要」(片山所長)とし、現段階で完成の時期は未定だという。

(坂口 裕一=日経コンピュータ)