オージス総研の上野専務 日本IBMやオージス総研など21社は5月19日、オブジェクト指向のモデリング言語である「UML」の活用を目指した特定非営利活動法人(NPO)「UMLモデリング推進協議会(UMTP/Japan)」を設立した。最大の狙いは、UMLを業務プロセスのモデリング言語のデファクト・スタンダードに育て上げること。業務モデルの表記法をUMLに統一して、企業間におけるシステム連携や業務プロセスの共有化を促進することを目指す。

 UMLはオブジェクト指向言語であるJavaの普及もあり、この数年で急速に普及が進んている。UML技術者の数も増え、オージス総研が1998年9月から実施しているUML技術者の認定資格「OGIS UML University」は、「今年4月末現在で受験者は25万人、合格者は4万人に達している。特に2001年ごろから受験者が一気に増えた」(オージス総研の上野南海雄専務、写真)。

東京国際大学の堀内教授 ただし現状では、UMLの用途はシステムの設計が中心。こうしたUMLの用途を業務プロセスのモデリングにも広げていくのが、UMTP/Japanの目的だ。発起人幹事を務める東京国際大学の堀内一教授(写真)は、「業務プロセスのモデリングを進めるうえで、だれもが理解できる表記法を定めるのが不可欠」と強調。表記法の標準化が進んでいない現状について、「企業間でシステム連携を実施する場合など、お互いが業務プロセスの理解に苦労することになる。ユーザー企業とエンジニアの意思疎通にも支障をきたしている。結果的に、誤解や思い違いがシステム・トラブルの原因になっている例も山ほどある」と続ける。

 UMTP/Japanはモデリング手法をUMLに統一することで、企業間で業務プロセスの共有や流通を容易にすることを目指す。そのためにまず力を入れるのが、UML技術者の拡大だ。UMTP/Japanは、オージス総研からOGIS UML Universityの試験にかかわるコンテンツを無償で譲り受け、今年11月から新たな資格制度「UMTP University」を開始する。

 UMTP Universityは、UMLを使ったモデリングの習熟度を測るという位置付けで、受験料は無料、合格者の認定料は4000~5000円程度を予定している。「会員企業には、UMTP Universityをエンジニアのスキルとして評価するように働きかけていく」(堀内教授)。オブジェクト指向技術の標準化を進める世界的な非営利団体「OMG」が同時期に開始する試験「OMG認定UML技術者資格試験プログラム」とはすみ分けができるという。

 技術者の拡大と併せて、UMTP/Japanは流通や医療といった業界特化型の汎用的な業務プロセスをUMLでモデリングしていく。業界団体やユーザー企業に協力を広く働きかけ、国際的に通用する業界標準モデルの開発を目指す。「国内外の企業が容易に業務プロセスを連携できるようにしていきたい」(堀内教授)。

 UMTP/Japanは、東京国際大学の堀内教授とオージス総研の上野専務、日本IBMの堀田一芙常務の3人が発起人幹事を務める。このほか発起人企業として、富士通や日立製作所、NEC、野村総合研究所、日本オラクルといった大手ITベンダー、オブジェクト指向の分野で実績のある日本ラショナルソフトウェアや豆蔵、さらにオブジェクト指向開発の先進的な導入企業であるサントリーなど、合計21社が名を連ねる。経済産業省の協力も得るほか、中国の武漢大学、韓国の高麗大学といったアジアのUML関連組織やOMGなどとも連携していく。

 UMTP/Japanの会費は、正会員で年額30万円、準会員で同10万円(いずれも法人会員の場合)。遅くとも1年後までに、ユーザー企業とITベンダーの合計で100社の会員参加を見込む。「100社のうち、ユーザー企業の割合を半分程度まで持っていきたい」と堀内教授は話す。

大和田 尚孝=日経コンピュータ