日本IBMは6月16日から、メインフレームの新機種「eServer zSeries 990」を出荷する。z990は従来の最上位機種である「z900」のさらに上位に当たる。MIPS値は9000MIPSでz900の3倍に相当する“お化け”サーバーだ。BP&システム製品事業担当の橋本孝之常務執行役員は、「1200人の開発者が10億ドルを超える投資と4年の歳月をかけて開発した」と説明。処理能力だけでなく、開発規模も桁外れの大きさである。

 これだけ大きなサーバーに対する需要はあるのだろうか。この問いに橋本常務は、「ある」と断言する。「z990の使い道は、レガシー・システムが動くメインフレームの集約だけにとどまらない。Webアプリケーションが動作するLinuxサーバーや、ERPシステムが動くオープン系サーバーなど、企業が保有するさまざまなシステムを集約できるので、TCO(システムの総コスト)を大幅に削減できる」(橋本常務執行役員)。

 z990では、新しい課金形態を導入する。あらかじめ用意した処理能力以上の性能が必要になった場合、日割りで料金を払えば1日単位で処理性能を引き上げることができる「オン/オフ キャパシティ・オン・デマンド」である。「キャパシティ・オン・デマンド」はこれまでも提供していたが、いったん処理性能を上げた後でまた元の処理能力に戻せる点が、従来とは異なる。このため、処理のピーク日だけプロセサをレンタル感覚で利用できる。

 さらに、メインフレームで動くソフトウエアの使用料金を、実際の処理量(MIPS値)に基づいて計算する「ワークロード使用料金」も見直した。具体的には、基本料金を45MSU(1MSUは約6MIPS)から3MSUに下げた。「必要なときに必要な分だけ料金を払うオン・デマンドの料金体系を強化した」(星野裕 エンタープライズ・サーバー製品事業部長)わけだ。

 コスト体系はこれまでになく柔軟にはなったが、従来と変わらない短所が一つある。それは、メインフレームの価格を明らかにしていないことだ。Linux専用機の位置付けである「z990 Linuxモデル」だけは「ハードウエア価格は1億円から」としているが、他のモデルでは「ハードウエアの利用料と保守費用の合計で月額1900万円から」という数字しか公表していない。ハードと保守の内訳は分からないし、レンタルの期間も明示されていないため、あまり参考にはならない。

 “明朗会計”ではない点について橋本常務執行役員は、次のように説明する。「(日本IBMでも)UNIXサーバーの一部は価格を半額にするなど、ローエンドの分野ではコスト競争力を全面に押し出している。ただ、ハイエンドであるメインフレームはそういうわけにいかない。ハードウエアだけでなく、ソフト製品やシステム全体の付加価値などを考慮したうえで、商談ごとに価格を検討する必要があるからだ。ただ、価格の透明性には努めていきたい」。

 しかしユーザー企業にとって、値段が明らかでない商品を買うのは気が進むはずがない。「ひょっとしたら、隣の会社は我が社の半値で同機種のメインフレームを買ったかもしれない」などと、疑心暗鬼になりかねない。こうした売り手主導の価格体系が、メインフレームの魅力を打ち消してしまっているのは間違いない。

大和田 尚孝=日経コンピュータ