米IBMのラルフ・マルティノ バイスプレジデント 「日本でもe-ビジネス・オンデマンドは必ず普及していく。多くの日本企業が会社を強くしたいという思いで、コスト削減や業務改革などに真剣に取り組んでいるからだ。こうした企業にとって、e-ビジネス・オンデマンドは必ず役立つ。これから導入事例も出てくるだろう」。米IBMのサービス部門で戦略立案やマーケティングを担当するラルフ・マルティノ バイスプレジデント(VP)は、こう話す。

 マルティノ氏はe-ビジネス・オンデマンドの意味を「顧客のニーズに合わせて様々なサービスを継続的に提供すること」と説明する。例えば、顧客がシステムを素早く作って欲しければすぐ作る、必要があればシステムの運用をアウトソーシングする。一方で、顧客が業務改革を進めるのであれば、コンサルティング・サービスを提供するといった具合だ。

 e-ビジネス・オンデマンドの象徴的な活用事例として、マルティノ氏は自動車部品の開発・販売を手がける米ビステオンを挙げる。同社は10年間で20億ドルの契約を米IBMと結び、レガシー・システムの刷新や業務改革に取り組んでいるという。米ビステオンは、これらのサービスを米IBMから継続的に提供してもらう。

 マルティノ氏は、「継続性を保つためにさまざまなサービスを用意していなければ、サービスの提供元として失格だ。顧客のニーズにこたえられないからだ」と発言。システム開発やコンサルティングといった“単体”のサービスを手がける企業よりも米IBMが優位であることを強調する。03年の第1四半期(1~3月期)で8四半期ぶりに米IBMが増収増益を果たしたのも、こうしたサービス事業が収益を下支えした結果である。

 一方で日本では、e-ビジネス・オンデマンドという言葉の意味さえまだ十分には理解されていない段階だ。マルティノ氏は、「顧客が直面する課題を解決していくという、当社の取り組み自体は従来となんら変わらない。ただし、顧客のビジネスの変化が激しくなっている。顧客にとってどんなサービスが必要なのか、それには何から始めるべきなのか。こうしたことを顧客とひざを突き合わせながら考えていくことが重要だ」と続けた。

(大和田 尚孝=日経コンピュータ)