「Yahoo! BBのように、街頭でのキャンペーンはしない。顧客獲得コストが高すぎる。長期的に見て利益が出るか疑問だ」。ニフティの古河建純社長は5月8日、事業方針説明会でこのように述べた。

 ニフティの2002年度(2003年3月期)における売上高は677億円。前年度より38億円増加した。営業利益は34億円。この数字だけをみると、同社のビジネスはすこぶる好調である。

 実際には、ニフティが目標としていた売上高700億円を大きく下回った。古河社長はその要因として、Yahoo! BBの影響により、ブロードバンド・ユーザーが伸びなかったことを挙げる。同社のブロードバンド・サービスの利用者は目標の75万ユーザーにとどかず、60万ユーザーにとどまった。

 しかし古河社長は、ニフティはYahoo! BBと同じような販促手段はとらないと強調する。「新規顧客の獲得はこれから一層難しくなり、コストは上がる。ダイヤルアップを利用しているニフティの既存会員に対してブロードバンドへの移行をより促していくとともに、既存顧客に満足してもらえるサービスを充実していくことに軸足を移す」と説明する。

 ニフティは現在の状況を「ブロードバンド・インターネットの本格的な普及期」と、とらえている。この状況を踏まえて、今後は「簡単な接続サービス体系」、「魅力ある付加サービス」、「安心、安全のセキュリティ・サービス」の3点を展開する方針。

 ADSL接続サービスについては、既存の12Mビット/秒に加えて、新たに廉価版の1Mビット/秒と、高速な20Mビット/秒のサービスを追加した3種類とする。付加サービスとしては、1対多のビデオ・チャットを可能にして、ミニ放送局のように利用できるサービスなどを追加。セキュリティ・サービスとしては、電子メールのウイルス・チェックや不正侵入を防止するファイアウオール機能などを含めて、月額700円程度で提供する予定だ。

 ニフティは、これらの新サービスを6月をメドに開始する。こうしたサービスを拡充することで、ブロードバンド・ユーザー数を1年後には106万人に増やすことを狙う。昨年度の実績では、新規のブロードバンド・ユーザーのうち7~8割がダイヤルアップ接続などを利用していたニフティの既存会員だった。

坂口 裕一=日経コンピュータ