クレジットカード会社のオーエムシーカード(OMCカード)は4月から、新審査システム「アイビス」を稼働させた。最大の特徴は、「収益性」と「リスク」の両面を考慮して、新規入会申込者にカードを発行するかどうかを審査すること。貸し倒れなどのリスクが高いと判断した場合でも、十分な収益性が見込めれば、一定の与信枠のカードを発行する。「収益性を加味して新規入会申込者を審査する試みは、国内のクレジットカード会社として初めて」(会員管理本部の山下政和本部長)。これによりOMCカードは、これまでカード発行の対象外としてきた顧客層の新規獲得を狙う。

 アイビスは人工知能技術を使って、新規入会申込者の収益性とリスクを算出する。過去数年間に入会した会員の年齢や年収、利用額、支払い実績などをデータベースに蓄積。年収や年齢と利用額や支払い実績などの相関関係を発見し、あらかじめ数万種類のグループ(パターン)に分類しておく。

 新規入会申込者の年齢や年収を登録すると、アイビスが数万種類のグループのどれに一番近いかを判断する。該当するグループの収益性とリスクを基に、新規申込者の収益性とリスクをそれぞれ0~1000の範囲で採点する。その結果を収益性とリスクの点数に応じて最大36分割した判定表に当てはめ、カード発行の可否や利用限度額を自動的に確定する。「審査に要する時間は数秒で済む」(水上佳明新審査システム開発タスクフォース主席)。

 新規入会申込者の情報は、全国のダイエー店舗などにある入会受付所からファクシミリで受信した申込書を、OCR技術を使って読み取って登録する。情報の登録から審査までの作業を自動化したことで、OMCカードは「最短5分でカードを発行できるようになった」(水上主席)。これまでは申込書の内容を手作業で審査システムに入力していたため、カード発行までに最短25分かかっていた。OMCカードは「人手による作業が減るため、カード発行費用を年間3億円削減できる」(山下本部長)とみている。

 アイビスの構築費用は19億7200万円、システム構築期間は約11カ月。構築はCSKが担当した。

(栗原 雅=日経コンピュータ)