マイクロソフト日本法人は5月1日、大企業向けのビジネスを統括する取締役として、もと米IBMソフトウエア・グループ担当バイスプレジデントの平井康文氏(42歳)を迎え入れる。日本IBM時代に大企業向けソフトウエア・ビジネスの分野でらつ腕を振るった平井氏の加勢で、不調のエンタープライズ部門を強化したい考えだ。

 平井氏は3月31日付でマイクロソフトに入社しており、現在は米マイクロソフトで研修を受けている。5月1日に「エンタープライズビジネス担当」取締役に就任し、これまで同担当だった鈴木和典取締役から引き継ぐ。

 エンタープライズビジネス部門は、金融、公共、通信など6業種に分かれており、それぞれに営業やSE、マーケティングの担当者が縦割りで配置されている。5月末に出荷が予定されている「Windows Server 2003」や「SQL Server」といったサーバー製品の売れ行きを大きく左右する総勢400人弱のエンタープライズ部門を、新たに加勢した平井氏が一手に引き受ける。

 これを受けて鈴木取締役は、顧客とパートナの満足度向上を図るための施策を推進する「ストラテジック・カスタマー/パートナー担当」と、コンサルティング・サービスや製品のライフサイクル管理などを統括する「エンタープライズサービス担当」を兼務する取締役になる。「エンタープライズサービス担当」は、これまで執行役員クラスが個別に担当していた部門を統括する新設の役職である。

 今回の人事は、不調に陥っていたエンタープライズ部門の事実上のテコ入れである。既報の通り(日経コンピュータ3月10日号特集2「マイクロソフトの憂鬱」を参照)、マイクロソフト日本法人におけるサーバー製品の売り上げは、直近の半期(2002年7~12月)で予算を20%以上も下回った。これが全体の売り上げにも響き、同半期の売上高は前年同期比で数%下回った。サーバー製品の予算が未達だったのは、マイクロソフトの売上高の上位5カ国で、日本だけである。

 大手パートナからは「鈴木取締役はエンタープライズ・ビジネスに不向き。エンタープライズ分野での人脈がある方ではないし、自らパートナや大手顧客のトップに会いに行くこともあまりなかった」(大手パートナ幹部)という手厳しい声も上がっていた。そこで、エンタープライズ分野で実績を持つ平井氏に白羽の矢が立った。

 1983年に日本IBMへ入社した平井氏は、2000年に39歳という異例の若さで日本IBMのソフトウェア事業部長に就任。「WebSphere」、「DB2」、「Lotus」、「Tivoli」という四つの主力ブランドを統括し、大手パートナ企業を取り込みながら売り上げを伸ばした。2002年7月からは米IBMで全世界のソフトウエア・ビジネスの営業を担当していた。出身は徳島県で、大学は九州大学理学部を卒業。趣味はチェロの演奏。

井上 理=日経コンピュータ