「ERPパッケージ(統合業務パッケージ)を使って5年、やっとそのすごさわかってきた」。こう語るのは、電子材料メーカー三井金属鉱業)の三井一夫IT企画室長だ。同社は1998年にSAPジャパンのERPパッケージ「R/3」を本社で導入。今ではグループ55社に導入している。その成果は、この4月から月次による連結決算を始めた際に出た。「締め日から6営業日後には月次の連結決算がわかる」という。

 R/3は、グループ内の業務の標準化する上でも多大な貢献をした。ERPパッケージ・ベンダーの多くは「パッケージに埋め込まれた理想の業務フローに自社の業務を合わせることによる効率化」をアピールする。だが三井室長は「それよりも『標準化』によるメリットが大きい」と力説する。

 例として三井室長は業務教育を挙げる。「グループ内のどこにいっても業務の流れが一緒なので、社員はほかの職場に移ってもすぐに働き出せる。さらに新人は業務の流れを誰にでも聞くことができるようになった」。

 世の中では、ERPパッケージの導入には、カスタマイズに多額の費用がかかるという意見が根強い。だが三井IT企画室長は「そうでもない」と考える。三井金属が1998年に財務会計、管理会計、販売管理、在庫管理の4モジュールを導入したときの投資額は15億円だった。「カスタマイズをほとんどしなかったため、この程度で納まった。それでもやりたいことはほとんどできた」と言う。11カ月という短期間の導入したことも貢献した。

 グループ企業55社への導入は三井金属の100%子会社のユアソフトが全面的に担当した。同社はこのノウハウを活かし、R/3のテンプレート集「リアルモデル」を外販している。リアルモデルはSAPジャパンの中堅企業向け短期導入プログラム「mySAP All-in-One」の推奨テンプレートになっている。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ