「今後のITの発展のために、UMLを積極的に広めたい。そのためには、ワールドワイド(全世界)で共通のUML資格試験を立ち上げることが必要だった」。オブジェクト技術関連の非営利団体、OMG(オブジェクト・マネジメント・グループの会長兼CEO、リチャード・ソーリー氏(写真)は、力を込めてこう語った。

 OMGとユーエムエル教育研究所(UTI)は4月16日、モデリング言語「UML」の技術者向け資格試験である「OMG認定UML技術者資格試験プログラム」を始めると発表した。最大の特徴は、全世界で共通の試験を実施すること。1回目の試験は、今年11月に日米両国で同時に実施する予定。国内では初年度で5000人の受験者を、全世界では3年間で10万人規模の受験者を見込んでいるという。

 設ける資格は、大きく次の三つ。UML自体の記述/理解能力を判定する「UMLディベロッパー」、UMLを使った設計能力を判定する「UMLアーキテクト」、金融や製造、あるいは組み込み機器など業種/適用分野ごとの方法論や設計能力を試験する「ドメインUML技術者」である。UMLディベロッパーについては、初級、中級、上級の三つのグレードを設ける。11月にはまず、UMLディベロッパーの初級試験を行う予定。12月には中級、2004年1月には上級を実施する。

 ただし、資格試験の具体的な内容についてはまだ検討中という。現在、OMGが資格試験の内容を作成するUMLの専門家チームを編成中で、「6月になれば具体的なものが見えてくる」(ソーリー会長)。受験料金も未定だが、「国内では1万5000円程度を考えている」(UTIの近森 満 代表取締役)。

 試験内容の作成や試験実施の準備は、OMGとUTIが共同で実施する。UTIは日本を含めたアジア・パシフィック地域での試験を管轄。OMGはUTIが担当する地域以外の欧米などでの試験を担当する。

 OMGはベンダー、ユーザー企業を含む約700社の会員企業からなる国際的なオブジェクト技術促進・標準化の団体。分散オブジェクトの標準技術「CORBA」を策定したことで有名だ。一方のUTIはこの資格試験プロジェクトのために設立された会社で、OMGの日本代表であるオブジェクトテクノロジー研究所ピーエイの共同出資によるものである。

 「現在は、システムへの要求や分析、デザインをうまくドキュメント化する共通の体系がまだ広まっていない。それどころか、ドキュメント化さえもされていない。これは由々しきことだ。システムを構築、改変を加えながら活用を進めていくためには、ドキュメント化が必須。中長期的なメンテナンスや運用を考えると、だれが見ても分かる共通のドキュメント体系が必要だ。UMLという体系が普及することで、システムを提供するベンダーにも、システムを使うユーザー企業にも大きなメリットが生まれる。UMLの資格試験は、UMLの普及に大きく貢献する」(ソーリー会長)。

(高下 義弘=日経コンピュータ)