パシフィコ横浜(所在地:横浜市)で4月3日から開催しているロボット総合展示会「ROBODEX 2003」では、メーカー各社に混じって、国内の大学からの出展も多く見られる。娯楽から芸術、医療、平和維持まで多様な目的を持ったロボットや、人間の行動を支援する機器を開発しており、独特の仕組みや機能を持つ、優れものを展示している。これらの展示からは、商業目的でない面白さを堪能できる。出展数38のうち、大学からの出展が13に上る。

●四肢不随でも1人で自由に動ける---目で操作する電動車椅子

  写真1 奈良先端科学技術大学院大学の電動車椅子「WATSON」
 
   

 奈良先端科学技術大学院大学は、手足の不自由な人が介助者なしで動くことを目指した電動車椅子「WATSON」を展示している(写真1)。市販の電動車椅子にノート・パソコンと小型CCDカメラ2個を組み合わせて開発した。

 カメラは車椅子の前部に設置してあり、座っている人間の表情を捉える。うなずくと車椅子が動き出し、左右を向くとその方向に曲がり、首を左右に振ると停止する、という具合に、手足を使わなくても顔や視線の動きだけで移動することが可能だ。

 パソコンに地図や経路の情報を入力しておけば、そのルートに従って自動走行する。同大学の担当者は「病院や介護施設のほか、美術館や図書館といった文化施設でも活用できる」としている。


●気軽に着ることのできる筋力増強スーツ

  写真2 東京理科大学の「マッスルスーツ」
 
   
  写真3 神奈川工科大学の筋力増強スーツ
 
   

 東京理科大学のブースでは、人間の筋力を補完するスーツ「マッスルスーツ」を展示している(写真2)。来場者が実際に試着することが可能だ。

 スーツはウレタンの板を布で覆ったもの。金属製の筋力増強スーツに比べて軽く、簡単に着脱できる。空気圧式の人工筋肉を使用しており、人間の筋肉と同様に収縮、弛緩させることで腕の曲げ伸ばしや上げ下げを可能にした。

 会場で試着できるモデルは、ボタンを押すと人工筋肉が収縮し腕が曲がる。実用化する際には、人間の関節の動きを検知するセンサーを付け、人間の動きに連動してスーツが動作する仕組みにするという。

 こうした筋力増強スーツは、神奈川工科大学も出展している(写真3)。こちらは介護時の作業支援という用途を想定しており、会場ではスーツを着た女性が実際に人間を持ち上げ、ベッドから車椅子まで運ぶデモを実演している。


●縄跳び、腕相撲---遊びの場で活躍するロボットたち

  写真4 東海大学の「ジャンピングロボット」
 
   
  写真5 龍谷大学の「遠隔腕相撲システム」
 
   

 東海大学のブースには、長縄を跳べる一風変わったロボットがある。その名も「ジャンピングロボット」。水蒸気とシリンダー、それに光センサーを備えており、縄の回ってくるタイミングに合わせて自分自身を跳び上がらせる。

 30分ごとに実施するデモで、実際に縄跳びをするところを見ることが可能だ(写真4)。この縄跳びロボットを元に、“飛び跳ねる”という動作をロボットの移動方法の一つとして応用する。

 龍谷大学のブースでは、2人の人間が機械を介して腕相撲で対戦する「遠隔腕相撲システム」を展示している(写真5)。2人の対戦者はそれぞれ、相手の人間の代わりに機械の腕を握り力を込める。腕の位置、掛かっている力の大きさといった情報は、2台の機械の間で送受信し、相手方の機械の腕に反映される。

 今回の展示では、2台の機械を隣に置いているが、将来はインターネットを介して、遠隔地にいる人間と対戦できるようにする計画だ。


●地雷発見を手助けするロボットも

  写真6 千葉大学の地雷探知ロボット「COMET-III」
 
   
  写真7 東京工業大学の地雷検知システム
 
   

 こうした遊びの場で活躍するロボットとは対極的な、人間の代わりに危険な仕事を担うロボットも見ることができる。

 千葉大学のブースでは、地雷探知ロボット「COMET-III」を展示している(写真6)。クモのように足が8本あり、後ろの6本足で移動しながら前の2本足で地雷を探す。金属探知器と電磁波センサーを備えており、金属製の地雷だけでなく、従来発見が困難だったプラスチック製の地雷も検知できる。

 地雷を発見すると、マーカーで地面に印を付けるとともに、GPSで地雷の位置を調べ、遠隔地にあるパソコンに無線LANで位置情報を送る。

 現在はまだプラスチック製地雷の発見率が60~70%と低いため、実用化に向けて地雷発見の精度を高めるよう研究を続けているという。このほかに同大学では地雷の発見に併せ、地雷を除去できるロボットを開発している。

 同様の地雷検知システムは東京工業大学も開発中だ。こちらは遠隔操作のバギー車に地雷探知用のアームを取り付けたもの(写真7)。両校とも、数年後には実際に世界各地の地雷原で使えるよう開発を進めているという。ロボット技術という新たな形で日本が国際貢献できる日も、そう遠くはなさそうだ。

(金子 寛人=日経コンピュータ)

■関連情報
ROBODEXのWebサイト