「今すぐにでもグリッド・コンピューティングが可能になるようなことを言うベンダーもあるが、もっときちんと説明すべきだ。現時点で世界中の誰もが利用できる技術とはいえない」。サン・マイクロシステムズの山本恭典データセンター・ソリューション事業本部長はこう断言する。「現在進んでいるのは、プロセサやメモリーを使用する組織と使用目的がはっきりしている場合だけだ。それらを明確にできない限り『商用グリッド』の実現は難しい」と続けた。

 その後、山本事業部長は「世界中の人々が、世界中のコンピュータ資源を共有して使うことができるようになるのは理想だ。当社でも5A(Anytime Anywhere Realization of on Any Device by Anyeone Authorized)という目標を掲げている」と断りを入れた上で、「しかし、それを実現できるのは第3段階だと考えている」と説明する。サンは企業の一部門でコンピュータ資源を共有しあう段階を第1段階、部門をまたがってコンピュータ資源を共有する段階を第2段階としている。現在は第2段階にあるという。

 「第2段階以降は、コンピュータ資源を利用する際の取り決めが必要になる。誰が、何のために、どのくらいの量の資源を使うのか。課金やセキュリティのレベルはどうするのか、といったことだ」(山本事業本部長)。そのために、同社はヒューレット・パッカードらと組織や人の認証の標準化団体「リバティ・アライアンス」を立ち上げ、モノの認証のために必要なICチップの標準化団体「オートIDセンター」をサポートしているという。

 続けて「昨年自律コンピューティング構想『N1』を発表する前に、オートIDセンターのサポート(1999年)とリバティ・アライアンス(2001年)の立ち上げを果たしているのは、理にかなっている」と自負する。さらに、「認証についてあまり触れずにグリッド・コンピューティングができるようなことを言ったり、標準化団体に特定企業の仕様を押し付けるようなベンダーは信用できない」と、暗にIBMを批判した。

 N1とは、コンピュータが自律的に資源構成や物理的な配置を行い、システム管理者が、システム資源の物理的な構成を意識しなくても運用できるようにするための技術とその構想。「コンピュータの資源を意識しなくてよいという点で両者は同じこと。システム管理者から見ればN1であり、エンド・ユーザーから見ればグリッド・コンピューティングである」(山本事業本部長)とする。

(矢口 竜太郎=日経コンピュータ)