「今後はLinux事業を一層強化し、一つの柱にしていきたい」。NECソリューションズの池原憲二常務は3月26日、同社のLinux事業の強化に関する記者発表会でこう宣言した。「このような形で当社の役員がLinuxに注力することを明言したのは、今回が初めて」(池原常務)だ。それまで、同社のLinux関連の発表は事業部単位がほとんどだった。

 NECがこの発表で宣言した「Linux事業強化」の内容は大きく三つある。2003年度のLinux関連の売り上げを2002年度比で倍増させること、NECグループ全体でLinuxに関する情報共有を進め、ソフトウエアの開発力やサポート力を高めること、同社の自律コンピューティング構想「VALUMO」に基づくミドルウエア製品群「VALUMOウェア」をすべてLinuxで動作できるようにすることだ。

 NECが“決意表明”と同時にアピールしたのは、1999年以来のシステム構築実績である。これまで国内外で1000以上のシステム構築実績があるという。また、1000人を超えるLinux技術者を抱えていることも強調した。「企業戦略上詳しくは言えないが、カーネルのソース・コードを改良して、Linuxコミュニティに貢献できるくらいの技術力を持った技術者は数十人いる」(伊久美功一システムソフトウェア事業本部長)。

 しかし、実績を強調すればするほど、役員の正式コミットが今日まで遅れたことが不思議だ。その一因には、マイクロソフトとの親密な関係を意識したことが考えられる。それでも、競合他社がLinuxへの取り組みを大々的に発表するなか、NECとしても何かしらのアピールが必要になった、と考えるのが自然だろう。競合他社のうち、米IBMは2000年にパソコンから、オフコン、メインフレームまでの全サーバーでのLinuxの動作を保証し始めた。富士通は昨年10月に基幹系システムにLinuxを積極的に利用する方針を打ち出している。

 また今回の発表では、NEC独自の“売り”があまりよく見えなかった。IBMは複数種のサーバーをLinuxで統合できることを売りにしているし、富士通はLinux向けに最適化した専用ハードを今後製造することを売りにしている。それらに比べ「競合他社との差異化要因は実績」(池原常務)というNECの言葉は、インパクトに欠ける。

矢口 竜太郎=日経コンピュータ