「今まではサーバーがダウンしたときに、他のサーバーへの処理引き継ぎに数分を要した。それが20秒程度に短縮できた」。近畿日本ツーリスト企画室CRM・IT戦略チームの浅妻勇課長代理は、日本オラクルのデータベースOracle9i Database向けクラスタリング・ソフト「RAC(Real Application Clusters)」を利用した効果をこのように語る。

 近畿日本ツーリストは1月27日から、旅行に関する会員制コミュニティ「クラブツーリズム」の旅行予約システム用サーバーでRACを利用している。従来は、日本ヒューレット・パッカード(HP)のIAサーバー「Proliant6500」(OSはWindows NT 4.0)を4台、クラスタリング・ソフトとして「Oracle8 Oracle Parallel Server(OPS)」を利用していた。これをRACの採用と同時に、クラスタを構成するサーバーをHPのIAサーバー「DL580G2」(OSはWindows2000 Advanced Server)4台の構成に変えた。各サーバーは、動作周波数1.4GHzのXeonプロセサを4基ずつ搭載している。

 同社がRACを導入したのは、クラブツーリズムを利用する会員数やトランザクション数がこれから増加すると見込んでいるため。クラブツーリズムの会員数は約720万人で、売り上げは2002年で1400億円。これは近畿日本ツーリストの総売上の20%を超える。

 以前はコールセンターやWeb経由の通信販売のみだったが、現在ではクラブツーリズムのパッケージ旅行を全国に250カ所ある店舗でも購入できる。このため、予約システムに接続する端末の台数が大幅に増え、「より信頼性の高いシステムが必要になった」(浅妻課長代理)。現在のシステムは、「会員数が1000万~1500万人まで耐えられる」と浅妻課長は話す。

 RACは、サーバーの負荷を分散したり、障害発生時に他のサーバーへ処理を引き継がせる機能を持つ。前バージョンにあたるOPSと比べ、複数のサーバーをクラスタ構成で利用したときの処理能力を向上させた。今回のシステム構築を担当した日本HPの検証によれば、OPSを利用していた旧システムと比べて処理性能は5~10倍向上したという。

松浦 龍夫=日経コンピュータ