坂村健教授 ICタグの実用化を目指す標準化団体「ユビキタスIDセンター」が3月11日、正式に発足した。ICタグとは、ICチップと無線通信用のアンテナからなる超小型の装置のこと。国内外で実用化に向けた動きが活発になっている。

 ユビキタスIDセンターは、米マサチューセッツ工科大学内に本拠を置く同種の標準化団体「オートIDセンター 」に対抗する勢力と見られている。これに対して、ユビキタスIDセンターの発起人である東京大学の坂村健教授(写真)は、「オートIDセンターと戦うつもりはない。標準化の範囲などが異なるので、間違えないでほしい」と発言。対抗の構図を否定した。

 「先週、オートIDセンターの(エグゼクティブ・ディレクター兼共同設立者である)アシュトン氏が私の研究室を訪問した。そのときにちゃんと当方の研究内容を説明し、技術的な資料も提供した。お茶も出した。そもそも学問の世界で競争があるのは常識。そうかといって、喧嘩して競争相手をつぶすことはない」と坂村教授はエピソードを披露。オートIDセンターと友好関係にあることを強調する。

 とはいうものの、ユビキタスIDセンターによる標準化を説明する段になると、オートIDセンターより優位であることを指摘するのも忘れない。例えば、「どんなときでもインターネットに接続しなければ情報が得られないようだと利便性を悪くなる」と語り、ICタグに付随する情報をインターネット経由で検索するオートIDセンターの規格に疑問を呈した。

 ユビキタスIDセンターは今年4月から実用化に向けた実験に着手する。実験内容はまだ正式に確定していない。

(栗原 雅=日経コンピュータ)

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