「インターネットの普及で旅行会社の“中抜き”が進んでいる今こそ、旅行業界は一丸となって電子商取引の効率化を目指すべきだ」。旅行業界における企業間取引の標準規格である「TravelXML」の開発に携わる、社団法人日本旅行業協会(JATA)の佐藤 進 総務部情報化推進担当部長はこう強調する。JATAは観光事業の発展や旅行業務の改善を担う団体で、JTB、近畿日本ツーリスト、日本旅行といった大手が参加している。TravelXMLはJATAの作業部会と、XMLの推進団体であるXMLコンソーシアムが共同で策定している。

 JATAとXMLコンソーシアムは4月にも、TravelXMLのドラフトを作成する。旅行会社やXMLコンソーシアム参加ベンダーによる評価・検証を経て、7月にも最終仕様の公開を目指す。JATAの佐藤担当部長は、「TravelXMLをいち早く普及させるためにも、2003年度後半にはTravelXMLを活用したシステムの事例を出したい」としている。

 各旅行会社がTravelXMLの策定に積極的なのは、「旅行会社と宿泊施設などのやり取りを効率化できる」(JATAの佐藤担当部長)からだ。例えば、旅行会社が送る予約要求や宿泊者情報のフォーマットをXMLで定めれば、宿泊施設はさまざまな旅行会社からのデータ受信が容易にできる。現在、旅行会社と宿泊施設の間では、さまざまな形式でデータをやり取りしている。宿泊施設側も旅行会社側もシステム化に相当の負担がかかっている。

 各旅行会社はTravelXMLの利用を海外の宿泊施設にも積極的に呼びかける方針。現在、海外のホテルと日本の旅行会社のやり取りのほとんどは、ファクシミリを使っている。「あるハワイの大手ホテルは日本の旅行会社200社と取り引きがあり、全3000室の7~8割を日本からの宿泊客が占める。宿泊客の情報をすべてファクシミリで処理しているので、相当な手間がかかっている」(JATAの佐藤担当部長)。

 XMLコンソーシアムの参加ベンダーであり、XML関連の事業を手がけるインフォテリアの平野洋一郎代表取締役社長CEO(XMLコンソーソアム副会長)は、「XMLに関する数々の仕様を取りまとめてきた経験を生かして、汎用的なTravelXMLの開発を目指す」としている。

大和田 尚孝=日経コンピュータ