ソフトウェアの品質向上を目指して、テストの手法やプロセスについて議論する「ソフトウェアテストシンポジウム2003(JaSST'03)」が3月6日、東京都杉並区にある日本科学技術連盟で開催された。重大なシステムトラブルが社会的な問題になっている中で、第1回目となる同シンポジウムには170人を超える参加者が集まり、基調講演では立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。
「ソフトウエアのテストで苦労している技術者は多い。それにもかかわらず、集まって悩みを話し合う場があまりない。技術者が抱える課題を議論することで、テストに関する技術力の向上を図りたい」。JaSST'03実行委員長の西康晴氏は、シンポジウムの目的をこう強調する。西氏は、テスト計画の立案や実行支援などを専門に手がけるエス・キュー・シーで技術本部コンサルティング部の部長を務めている。
基調講演をした日立ソフトウェアエンジニアリングの山浦恒央開発本部ミドルソフト第2設計部専任部長は、ソフトウエアの品質保証(QA)活動における課題について、QA担当者の地位やモラールが低いことを指摘。「ソフトウエアの納期短縮と品質向上を両立するためにもテストの重要性はますます高まっている。しかし、現実としてはテストや品質管理が軽視されることも少なくない」と述べた。山浦専任部長は、こうした状況を打破するためにも、QA活動の最高責任者である“品質マネージャ”をアサインすべきだと説く。「QA活動の全責任を担う品質マネージャは、QA活動に関してプロジェクト・マネジャを指揮する役割を持つ。設計担当者や開発担当者に対して、品質向上の観点から“攻めの姿勢”で積極的に意見を出すのも、品質マネージャの仕事だ」(山浦専任部長)。
JaSST'03ではこのほか、テストの強化や品質管理の強化を訴えるエンジニアの講演や、テスト実施を支援するツールの展示や説明も行われた。JaSST'03を主催したのは、ソフトウェアテスト技術者交流会とソフトウェア技術者ネットワークという二つの団体。いずれも、システム・インテグレータやユーザー企業のシステム担当者が参加している団体である。