米フォレスターのマッカーシー氏 「次のシステム・ビジョンは“Organic IT”だ」。こう語るのは米フォレスター・リサーチのリサーチ部門グループ・ディレクタであるジョン・C・マッカーシー氏(写真)である。

 Organic IT(有機的IT)は同社の造語で、システムを4つの層で考える。一番下に来るのはRAIL(Redundant Array of Internet Links)層、その上に一つの共有資源として見えるストレージ(ディスク)装置の層、その上にプロセサやメモリーなどで構成するコンピューティング層、一番上にはWebサービスの層が来る。「今やすっかりポピュラーになったRAID(Redundant Array of Inexpensve Disks)を思い出してくれ。それと同じように、RAILでは安価なインターネット接続回線を複数使って、高いパフォーマンスと高い信頼性を低コストで実現する。コンピューティング層には、安価なプロセサを利用できる。Organic ITではこれまでよりもシステムの性能あたりの価格が低く抑えられる」。

 「でも、共有ストレージがSANのようなストレージ装置のことだとすれば、ずいぶん高くつくのでは?」という、記者の反論にもマッカーシー氏は動じない。「サーバーに直接接続されているディスクは、容量の半分程度しか使われていない。このほうがよほど大きな無駄だ。こんなことは許されない。ラックマウント型やブレード型のサーバーとSANを組み合わせて、直接接続のディスクをなくすのがこれからのやり方だ」と主張する。さらに「IBMの“On Demand Computing”が言っているのはOrganic ITと同じ。これからのシステムはこうなる。日本のコンピュータ・メーカーも同様の構想の提示を迫られたようだね」と論評した。

 だったら企業の情報システム部門はOrganic ITに向かって投資するだろうか? 「今すぐというのは難しいかもしれない。1990年台はビジネスとテクノロジの伸びが両方とも顕著だった。IT部門はそれを消化しきれず、現在は胸焼け(heartburn)を起こしている状態だ。最近CIO(最高情報責任者)を対象に実施した調査では、回答者の20%が『使わないソフトウエア・ライセンスを持っている』と回答したし、18%が『意味もなく重複しているデータベース管理システムがある』と答えた。ある会社は2000本のアプリケーションを調査したところ、そのうち本当に必要なのは200本だけだった。こういう状況がシステム投資の暗雲になっている。今は多くの会社にとって、ハウス・クリーニングの時期だ。それでも、今年後半から来年にかけては、新しいシステムに向けた投資が活発化するだろう」。

 最後に「日本の読者に言いたいことは?」と尋ねたところ、こんな答が返ってきた。「日本企業の多くは、悲観的になりすぎるという過ちを犯している。ワイヤレス、Webサービス、コラボレーションなどの分野で、今起きている技術革新は大変なものだ。今投資しないと、競争力に決定的な差を付けられる。単純な節約ではなく、ビジネス・プロセスを2、3段レベルアップさせることを考えるべきだ」。

原田 英生=日経コンピュータ