「ソフトウエアの実装技術の主流は2年ごとに変わる。特定の技術でソフトウエアを部品化しても、それが将来的に利用できるとは限らない。ソフトウエアを再利用したいのなら、実装技術から独立した“モデル”の形で部品化するべきだ」。オブジェクトテクノロジー研究所で代表取締役を務める鎌田博樹氏はこのように主張する。

 オブジェクトテクノロジー研究所は、オブジェクト指向技術の標準化組織である米OMG(オブジェクト・マネジメント・グループ)の日本代表を務める。以前は社名をOMGジャパンとしていたが、2月7日に社名変更を正式発表。旧OMGジャパンの事業を引き継ぐとともに、技術/市場動向調査やトレーニング、出版など独自の活動も展開する方針に変えた。

 その一環として、2月中に「オブジェクト技術推進センター(仮称)」と呼ぶNPO(非営利組織)を立ち上げる。「狙いは、オープンソースのモデル・テンプレートを作成し、普及させること」と鎌田氏は話す。モデル・テンプレートとは、冒頭の言葉にあるような“モデル”の形での再利用を可能にする部品のことを指す。

 ここでいうモデルは、OMGが提唱しているソフトウエア体系「MDA(モデル・ドリブン・アーキテクチャ)」のPIM(プラットフォーム独立モデル)に相当する。モデリング言語のUML(ユニファイド・モデリング・ランゲージ)で記述する。MDAでは「UMLプロファイル」という仕組みを使うことで、PIMをEJB(Enterprise JavaBeans)やCORBA(Common Object Request Broker Architecture)、Webサービスといった実装技術で動作するアプリケーションに変換できるようにしている。

 オブジェクト技術推進センターで作成するモデル・テンプレートの内容は決まっていないが、「典型的なモデルの定義と例をジャンルごとにそろえることを考えている。そのようなものがないと、MDAの考え方はなかなか普及しない」(鎌田氏)。

 オブジェクト技術推進センターでは、「オブジェクト指向の世界で5~10年以上のキャリアを持ち、単に会社のためだけでなく、世の中に対して何かしてきた、あるいは何かしたいという志を持つ」(鎌田氏)人たちを中心メンバーとして集め、モデル・テンプレートの作成に加えて、UMLユーザーズグループの運営、セミナーやカンファレンスの主催などを行う予定。NPOにしたのは、「コンソーシアム形式にして、各社の代表という形で集めても何も決まらない」(同)ため。東京都に特殊活動非営利法人として申請する。

 オブジェクトテクノロジー研究所は教育などを手がけるPAと共同で、10月からOMG公認のUML技術者資格認定プログラムを実施する予定。この認定プログラムで得られる収益の一部を、オブジェクト技術推進センターの活動資金に充てることを考えているという。

田中 淳=日経コンピュータ