経済産業省は2月7日から、「官民連携ポータル」構築プロジェクトに参加するベンダーの公募を開始する。2月14日には説明会を実施する意向だ。募集期間は2月28日まで。3月末までに選定を終える。選定されたベンダーは、2003年度末の本格稼働を目指して同ポータルの構築に取り組む。

 官民連携ポータルは、複数の中央省庁や地方自治体、さらには民間企業にまでまたがる申請や届け出を、インターネットを通じてワンストップで済ませられるようにするもの。例えば、化学品の安全に関する認可を得ようという場合、厚生労働省はもちろん、経済産業省や環境省にも届け出が必要になる。引っ越しをする場合には、市町村の役所に住民票の異動を届け出る必要があるほか、電力・水道・電話などの各企業にも移転の連絡をしなければならない。中央省庁・自治体において電子申請・届け出が可能になりつつあるが、いずれの取り組みも単独で、民間企業を含めた複数の機関が連携する例はない。

 経済産業省は利便性の高い電子申請・届け出を実現するため、「引っ越し」などのイベント単位にポータル・サイトを立ち上げ、ポータル・サイトに送られてきた申請・届け出を関係機関に振り分けられるようにする考えだ。今回の構築プロジェクトでは、会社設立関連の手続きのためのポータル・サイトを構築する。官民連携ポータルの意義を実証するとともに、課題の洗い出しに利用する。

 会社設立関連手続きは関連する機関が多く、ポータル化によって大きな効果が見込めることから対象に選んだ。会社を設立する際には、法務局や社会保険庁、公証役場、保健所といった公共機関に申請・届け出が必要になるほか、銀行、不動産会社、電力会社、電話会社などの民間企業に対して何かしらの手続きをする必要がある。「米国では2日ですむものが、日本では2カ月かかっている」(経済産業省の牧内勝哉 情報プロジェクト室長)状態だ。

 会社設立手続きポータル・サイトの構築は、3段階で進める。第1ステップでは、ポータル・サイト上で必要なデータを入力すれば、各種申請書が作成されるシステムを開発する。できあがった申請書を紙に出力して押印すれば、関係機関に届け出るための書類ができあがる。第2ステップでは、申請者がポータル・サイトにアクセスして作成した申請書を、関係機関のパソコンやファクシミリに出力できるようにする。申請者から見れば電子申請が可能になるわけだ。第3ステップでは、ポータル・サイトを関係機関の受付システムと接続し、すべてをペーパーレスで処理できるようにする。第3ステップの実現には、関係機関のシステム構築・変更を伴うため、関係機関の協力が得られる特定の地域を選んで取り組むことになる。各ステップの完了は、それぞれ6月、9月、2004年3月をめどにしている。

 一連の開発を行うため経済産業省は、2002年度の補正予算で3億円を確保した。ポータル・サイトと関係機関との間でやりとりするデータのフォーマットや通信手順を定めるため、これに先立つ2002年11月に大手メーカーなどを集めた委員会を設置し、議論を続けている。3月末までに、素案を固める見通しだ。

森 永輔=日経コンピュータ