「北京には技術的に優秀な企業が集中しており、ソフトウエア市場の規模も大きい。日本企業は北京に拠点を構えれば、それを足がかりに中国全土へ進出できる」。北京市人民政府科学技術委員会の兪慈声副会長は、北京のソフトウエア産業の強みをこう訴えた。「北京は中国でソフトウエア産業が最も発達した地域だ。企業数や売上高の合計は、いずれも中国全土の3分の1を占める。おまけにここ数年、年率30%の高成長を続けている」とその魅力をアピールする。

 中国のソフトウエア開発拠点といえば、日本では上海を中心とする長江デルタ地帯や大連が有名。両地区はそれぞれ日本でセミナーを開催するなど、日本企業の誘致合戦を繰り広げている。北京はベンチャー企業の集積地として有名な中関村などを市内に抱え、IT分野で一定の地位を占めているが、日本企業の誘致に関しては出遅れた感がある。北京は自らの長所を積極的にアナウンスし、巻き返しを図る。

 北京ソフトウェア産業促進センターの推計によると、北京に拠点を構えるソフトウエア企業の売上高合計は、2002年で約40億ドル、輸出額は約9000万ドル。それぞれ中国全土の30%、35%に相当する。ソフトウエア企業は2000社、従業員の総数は7万人に上るとしている。金融分野や通信分野のソフト開発に強みを持つほか、製造、流通なども得意分野。電子政府や電子商取引関連のソフト開発も盛んという。

 北京ソフトウェア産業促進センターの姜広智センター長は「日本企業は、特にアプリケーション・ソフトの分野で積極的に進出してほしい」と期待を語る。外資系ソフトウエア企業の対中投資は米国企業がほとんどで、分野も偏っているからだ。姜センター長は「国内で販売するソフトウエアの売上高総計の30%は外国で開発した製品。その大半はマイクロソフト、IBM、オラクルなど米国企業の開発したものだ。分野もOSやミドルウエアが多い」と指摘し、現状を打破する起爆剤としての役割を日本企業に求める。「アプリケーション・ソフトに取り組む中国企業と共同でビジネスを展開してほしい」と呼びかける。

 兪副会長や姜センター長を始め、北京の政府関係者と主要ソフトウエア企業の幹部など30人は、日本企業誘致のため代表団を組織して来日。一連の発言はこの1月30日に開催した記者会見でのものだ。続いて開催した日本企業対象のセミナーは、約400人収容の会場に人があふれるほどの盛況ぶり。企業の関心の高さをうかがわせた。

金子 寛人=日経コンピュータ