「複数のベンダーが参加する分散協調開発体制でのシステム構築が主流になってきたことで、CMMやCMMIの重要性が高まっている」。NECソリューションズ インターネット基盤開発本部でソフト開発プロセスの改善活動に取り組む込山俊博エキスパートは、CMM(能力成熟度モデル)やその後継版のCMMI(CMM統合)を活用する場面が増えてきたと指摘する。「特に海外のソフト会社に開発を委託するオフショア開発では重要になる」と続ける。

 海外のソフト会社の開発手順やプロジェクト管理方法は、日本のソフト会社のものと異なる場合がかなりある。極端な場合、技術者は優秀でも組織としての開発・管理の規範をほとんど持ち合わせていないことがある。「個々の技術者のスキルや単価のみを考慮して安易な発注を行うのは危険である。レビューやテストがズサンだと必ず手戻りが発生してしまう。結果として、受入れテストに工数がかかったり、現地に指導に赴く必要が生じる。結局コスト高になったり、納期遅延に陥ったりするケースが見うけられる」(込山氏)。

 日本と海外のソフト会社の開発プロセスを調整するときに有効になるのが、国際的に認知されたCMM/CMMIである。お互いに共通の言葉でプロセスを合わせ込むことができるからだ。

 こうした事情から最近は、日本企業のソフト開発を請け負うことが増えてきた中国でCMM/CMMIに取り組むソフト会社が増えている。成熟度レベルの達成が、自社の信用を高め、海外からの受注を拡大するための主要な指標と考えられているからだ。中国政府もソフト産業の新興策として、CMM/CMMIによるプロセス改善への取り組みを支援している。

 「CMM/CMMIの重要性をなかなか納得しない中国のソフト開発者がいた。しかしひとたび納得すれば、熱心にプロセス改善に取り組む優秀な開発者も多い」と、米ソフトウエア工学研究所(SEI)認定のCMMリードアセッサ/CMMIリードアプレイザでもある込山氏は中国での指導経験を語る。

 中国最大のソフト会社、東軟集団(NEUSOFT)は1月10日、CMM(能力成熟度モデル)で最高のレベル5を達成したと発表した(http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20030110/5/)。グローバルな分散協調開発体制にCMM/CMMIのような国際的なプロセスのモデルが重要になってきている。

(安保 秀雄=日経コンピュータ)